大好きな広田にカフェを、震災機に移住の野尻さん(東京出身)/陸前高田

▲ カフェとしてオープンする古民家の前に立つ野尻さん=広田町

 陸前高田市広田町に昨年9月移住した東京都足立区出身の野尻悠さん(23)が、同町でカフェのオープンを目指している。空き家となっている古民家を一部改修し、5月上旬に営業開始する予定。東日本大震災をきっかけに初めて同市を訪れ、住民との触れ合いを通じて大好きな場所となった広田町。「町のみんなの休憩所となるような店としたい」と夢を膨らませている。

 

5月のオープン目指す

 

 野尻さんと陸前高田市との縁は、大学3年の時。同級生に誘われ、広田町を拠点に交流人口拡大、地域キャリア教育などに取り組むNPO法人・SETの地域おこしプログラムに参加し、1週間ほど滞在した。
 思いやりにあふれた住民、ゆったりと流れる時間、豊かな自然。都会では味わえない地方の魅力に引かれ、大学に戻ってからもSETの学生サポーターとして通い続け、自然と「こんな場所に住みたい」と思うようになった。
 都内で就職し、社会人となったが、広田への思いを捨てきれず移住を決意。現在はSETの社会人メンバーとして活動している。
 当初から夢に掲げていたのが、広田でのカフェ開業。移住翌月には構想を練りつつ、店とする物件を探すなど実現に向けて動き出した。
 古民家は久保地内にあり、周辺に住宅がない隠れ家的な場所に立つ。木造平屋建てで、これまではSETの首都圏メンバーの宿泊・活動拠点などとして利用されてきた。
 店名は「彩葉(いろは)」。町民など来店者一人一人が彩る店という意味を込めた。
 広さ約20平方㍍ほどの一室を使い、まずは来店者が1人で思い思いの時間を過ごせるような場を作る。
 一部の内装やトイレは改修するが、ほとんど元々の古民家の雰囲気を生かす構想。部屋からきれいな広田湾を眺められるよう、民家前の木の伐採も進めている。将来的には、乳幼児連れの母親らが集える部屋と、大勢の人が憩う部屋も設ける。
 メニューは、地元の高校生らとともに考案している。コーヒーやホットチョコレート、ジュース、手作りケーキなどを提供し、徐々に品数を増やす。
 内装やトイレ改修費に充てるため、現在、インターネットで寄付を呼びかけるクラウドファンディング(https://readyfor.jp/projects/iroha)を実施中。期間は27日(金)までで、目標金額100万円を目指し、支援を呼びかけている。
 野尻さんは「東京の家族や友人からも応援してもらい、改めて人とのつながりの大切さを感じた。不安はあるけど、広田町の人がもっと楽しくすてきな日々を過ごせるような店となるよう頑張りたい」と決意する。