心打つ歌人の道 後世に佐藤霊峰(上有住出身)生誕100年/住田(別写真あり)
平成30年4月17日付 7面
住田町上有住の町民俗資料館で15日、天嶽地域構想学(及川良一学長)主催の「歌人・佐藤霊峰生誕100年」が開かれた。霊峰(本名・兼夫)は上有住八日町出身で、女流歌人の柳原白蓮に師事。率直な言葉から心打つ短歌を多く残し、今も多くの人々に愛される。この日は霊峰の長女・佐々木さやかさん(61)=紫波町=や地域住民らが訪れ、館内の展示物や作品をじっくりと見学しながら、後世に伝え残していく大切さなどを共有した。
今も愛される魅力共有、民俗資料館で記念企画
大正7年4月13日生まれの霊峰は歌壇に強く憧れ、昭和16年4月に上京。中央大学夜間部経済学部に入り、働きながら勉学に励むとともに、「情熱の歌人」と称された白蓮に弟子入りを果たした。
霊峰の雅号は、郷土の名峰・五葉山に由来する。歌集「土くれ」や自選詩歌句集「この道」などを発表した。
同24年に大船渡市出身の秀子さんと結婚し、一時は白蓮の家で生活。霊峰は白蓮主宰の同人誌「ことたま」で編集長も務め、一男一女を授かったものの病に倒れ、32年に38歳で他界した。
民俗資料館前には歌碑があり、白蓮が揮ごうした霊峰の歌「この道は細く果てなき道なれば 一人しづかに行かんとおもふ」が刻まれている。館内には、霊峰関連資料が多数展示されている。
地域の歴史文化や自然資源に光を当てる活動を進める同構想学では、霊峰が残した歌に親しみ、語り継ぐ心を養おうと企画。作品を愛する地域住民ら15人が参加した。
館内では霊峰の年譜や家族写真に加え、歌集「百日紅(さるすべり)」「若草」などに残した短歌作品を鑑賞。家族への深い愛情、古里の父母、恋愛、貧しさなど、素直な思いが込められた作品の数々は、今も多くの人々の共感を呼ぶ。参加者はじっくりと言葉を見つめ、霊峰が残した作品の世界に浸った。
時折涙を流しながら見学していた佐々木さんは「古里の風景を詠んだ作品も多く、そこで感じた自然や山、風の音などは、自分自身の中に一生あり続けることも改めて実感した。記録や記憶を残してくれて、地域の皆さんには感謝でいっぱい」と話していた。
後半は、参加者それぞれが好きな霊峰の作品を挙げ、素晴らしさや魅力を共有。「難しい言葉を使わずに、心に響く作品を残している」「父母への思いは、胸にこみ上げる」「ほっこりとさせる表現も多い」などの声が寄せられた。
白蓮が揮ごうした「この道は…」では自らの意志を貫く強さを感じさせる一方、日々の生活の何気ない幸せを残した作品も多い。出席者からは「もっと知ってもらうために、作品集のようなものを出せないか」など、さらなる発信を望む発言も多く出ていた。
霊峰関連の展示物は常設で、いつでも見学できる。開館時間は午前9時〜午後4時。入館料は一般個人が210円で、小中高校生は105円。国民の祝日、年末年始は休館となる。入館の問い合わせは、隣接する上有住地区公民館(℡48・2013)へ。