「松日橋」に関心を、29日午前9時から復旧作業/下有住

▲ すべて人力で行われる復旧作業(昨年9月の様子)=下有住

 住田町下有住高瀬地内の気仙川で29日(日)午前9時から、松日橋の復旧作業が行われる。300年以上前から地域住民が伝統を守り続ける木製の〝流れ橋〟で、3月上旬に見舞われた大雨の影響で流されていた。胴長などを持参すれば復旧作業に参加できるほか、見学も歓迎。橋を管理する同橋受益者組合(金野純一組合長)では、より多くの人々に伝統をつなぐ作業にかかわってもらい、後世へと継承していく機運を高めていくことにしている。

 

 伝統の木製〝流れ橋〟、参加や見学を呼びかけ

 

 松日橋は下有住の中山、松日両地域を結ぶ。江戸時代の元禄図絵図にも描かれていたとされ、古くから地域住民の生活を支えてきた。かつては下有住だけで七つの木橋があったというが、近年はこの地だけになった。
 同組合は、昭和57年に発足。左岸側の松日、右岸側の中山の計18世帯で構成する。右岸側には国道340号が通り、バス停留所が立つため、生活道路として利用される。また、川をはさみ、住居と田畑を持っている世帯もある。
 橋の長さは約40㍍で、橋板の材料には町産のスギ材を活用。橋脚は「叉股(ざまざ)」と呼ばれるクルミやクリの太い枝が二股に分かれた部分を使う。
 増水時はワイヤーロープでつながれた橋板が浮き、橋脚は流れに逆らわずに倒れる仕組みで、大雨を想定した〝流れ橋〟の構造。倒れるたびに住民らが川水に入り、叉股の角度を調整しながら組み合わせた上に橋板を乗せる。
 川沿いの住民にとって橋は生活に必要不可欠であり、かつては鉄筋コンクリートによる「永久橋」整備を行政に求めた時期もあった。しかし、すでにある橋との距離や、川岸の地盤が低いといった地形的な問題もあり、実現しないまま今日を迎えた。
 車社会の進展により、地元住民でも利用頻度は少なくなったというが、地域の人手のみで復旧することで絆を強めてきた。地元住民による木造橋の復旧は全国的にも珍しくなり、知恵や技術を伝承する重要性が増している。
 松日橋は現在、3月上旬の大雨に伴う増水で流され、現在は架けられてない。復旧作業を今月29日と決めた組合では、今回の作業を広く周知し、より多くの人々に参加・見学してもらい、松日橋への関心を高めようと期待を込める。
 金野組合長(73)は「人の手だけでシンプルに架けるのが、この橋の面白さ。今は、地元の中だけで作業に参加できる人はだんだん少なくなっている。でも、実際に川水に入るだけでなく、川岸から『曲がっている』などと声をかける人も大切」と話す。
 作業は2時間程度。川では胸付近まで水に浸かる可能性があり、参加希望者は胴長の着用を求める。川岸では自由に見学できる。
 大雨・増水時は延期する場合がある。問い合わせは金野組合長(℡090・4319・6087)へ。