誇れる商品作りへ意欲、復興拠点⑧街区に開所/大船渡(別写真あり)
平成30年5月2日付 1面
スリーピークス(ワイン醸造)
バンザイ・ファクトリー(食品製造等)
大船渡市大船渡町の大船渡駅周辺地区・津波復興拠点整備事業区域⑧街区に、ワインの醸造・販売を手がける㈱スリーピークス(及川武宏代表取締役)と、食品や木工品を製造・販売する㈱バンザイ・ファクトリー(髙橋和良代表取締役)の新工場がそれぞれ完成し、1日に開所式が開かれた。商業・業務機能の集積地に設けられた新たな産業の場で、両社は地域資源を活用した誇れる商品作りに取り組んでいくと誓い合った。
津波復興拠点整備事業区域は、市が進める土地区画整理事業区域内のうち、JR大船渡線から海側に位置。面積は10・4㌶あり、ホテルや商業施設などが立つ八つの街区と、駅前の交通広場、市防災観光交流センター、特定業務施設からなる。
⑧街区(約4500平方㍍)は「キャッセン・クリエイティブファーム」として、創造性のある事業を行う場に位置付け。街区の借地人であるまちづくり会社・㈱キャッセン大船渡(田村滿社長)が市と企業誘致を行い、スリーピークスとバンザイ・ファクトリーが立地することとなった。
スリーピークスはワインやシードルの生産、販売を行う醸造所1棟(床面積約160平方㍍)を建設。バンザイ・ファクトリーは椿茶やパスタなどの食品、木工品などを製造する工場3棟(合計床面積約290平方㍍)を整備した。
総事業費は、スリーピークスが約4000万円、バンザイ・ファクトリーが約6000万円。事業実施には産学金官が連携し、地域の資源と資金を生かした地域密着型企業による新規事業の立ち上げを支援する、国の「地域経済循環創造事業交付金」を活用した。
開所式は、キャッセン大船渡のコミュニティスペースで行われ、来賓や関係者ら30人余りが出席。田村社長のあいさつに続き、及川代表取締役(39)は「開所を節目の一つに、いい商品を作っていきたい」と、髙橋代表取締役(56)は「何のために勉強するのか、それを子どもたちに工場で体感してもらいたい」などと述べた。
戸田公明市長、齊藤俊明大船渡商工会議所会頭、米谷春夫㈱マイヤ社長、谷藤雅俊有限責任監査法人トーマツ代表社員が祝辞を述べ、2社の発展を祈念。式後は⑧街区へ移動し、各施設の見学が行われた。
スリーピークスでは、醸造所で地元産のブドウやリンゴを使ったワイン、シードルの製造、販売などを行う。施設内には製造に用いる破砕機やプレス機、タンクなどを設置。作業の様子をガラス越しに眺められる販売スペース、倉庫、検査室なども設けた。
3日(木)に本格オープンし、6日(日)まで営業。その後は週末を中心に週5日営業する見込みで、時間は午前11時~午後5時。醸造作業は今月から順次行い、年明けには第1号の大船渡産ワイン、シードルを販売する見通し。
及川代表取締役は「ようやく自分で全てを作れる環境がそろった。研究開発を重ね、じっくりといいワイン、シードルを作りたい」と意欲を見せる。
バンザイ・ファクトリーは陸前高田市から移転し、IT木工、製麺・煮物、椿茶・事務所の3施設で地域資源であるツバキや海産物を使った食品、IT技術による木工品を製造し、販売。工場は視察などにも対応した構造で、子どもたちがものづくりの現場に触れやすいよう、見学用窓は低めに設置した。
当面は平日の午前10時~午後5時まで営業。事前申し込みがあれば、見学や視察にも応じる。
髙橋代表取締役は「事業をちゃんと進め、目標としている子どもたちの勉強になる工場を目指したい。集中していいものを作っていきたい」と気持ちを新たにしていた。