「子どもの貧困率」14%、27年の全国平均上回る/陸前高田

 陸前高田市は、中学生以下の子を持つ保護者らを対象に29年に実施した生活に関するアンケート調査結果をまとめた。それによると、全国平均の半分以下の年間所得の家庭で育つ子どもの割合を示す「子どもの貧困率」は全体の14.1%で、27年の全国平均を上回った。市はこの結果をふまえた対応策の指針等を本年度内に策定するとし、困難度の高い世帯に対する具体的な支援についても関係機関とともに検討していく。

 

保護者ら対象に昨年調査/市が具体的な支援検討へ

 

 調査は、子育て中の世帯の困窮の実態などを詳しく把握することを目的とし、平成29年11~12月にかけて実施。子どもの貧困に関する調査結果の実施・公表は、震災前後を通じて県内沿岸自治体では同市が初めて行った。
 調査対象は、中学生以下の子を持つ市内の全保護者。アンケートを配布した1923件のうち、解答を得たのは1716件(回収率89・2%)だった。
 「子どもの貧困率」とは、世帯の年間所得が全国平均の半分(貧困線)以下の家庭で育つ子どもの割合。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、平成27年の「貧困線」は122万円で、「子どもの貧困率」は13・9%だった。
 同市でもこの貧困線に基づき、年間所得122万円以下の世帯を「困難度の高い世帯」と設定。今回の調査結果によると、中学生の貧困率は16・9%(回答415世帯のうち70世帯)、小学生は15・6%(回答639世帯のうち100世帯)、未就学児の貧困率は9・9%(回答477世帯のうち47世帯)。全体では14・1%と、27年の全国平均を0・2ポイント上回った。1人目の子どもと2人目以降の子どもで解答が重複する部分もあるが、特に小中学生の子を持つ保護者の悩みが深刻ということが分かった。
 特に中学生保護者の世帯構成のうち、「母と子どもだけの世帯」は全体の7・2%だが、「困難度の高い世帯」としての母子世帯の割合は一気に22・9%に跳ね上がる。「父と子どもだけの世帯」は全体の1・0%で、困難度の高い世帯として見ると1・4%にとどまっており、市民生部子ども子育て課の千葉達課長は「特に母子だけの世帯は困窮に陥りやすい傾向がある」と分析する。
 母親の就業状況に関する問いでも、困難度が高い世帯での最多は「非正規で1カ所に勤務」という回答で、全体の51・4%を占めた。千葉課長は「震災が直接原因かどうかまでは分からないが、非正規雇用の割合が高いのは、震災後に正規雇用の求人が少なかったことも要因の一つとして考えられる」という。
 「必要と思われる支援について」の問いに対し、困難度の高い世帯で最も高い割合を占めた回答は「保育や学校費用の軽減」で61%。次いで「子どもの医療費の助成」が41%、「奨学金制度の充実」が37%。「一時的に必要な資金を借りられる支援」についても20%が「必要」と答えた。
 市は、医療費給付事業や高校生未満の子どもを養育している保護者への児童手当支給といった事業をすでに展開しているが、27年度に策定した「市子ども・子育て支援事業計画」に関する本年度の中間見直しでは、▽被災児童に対する支援▽ひとり親への支援──を施策体系に追加。子どもの貧困に対する市の支援指針を本年度策定する計画だ。
 また、過去1年間の困窮経験の中で「必要な食料が買えなかった」という問いに「何度かあった」「頻繁にあった」と答えた世帯は合計18・6%。「必要な衣料が買えなかった」という問いに対し「何度かあった」「頻繁にあった」と答えた世帯も22・9%あったことから、NPOなど民間団体との連携も模索。市内で実施されている「子ども食堂」の取り組みや、「フードバンク」の仕組みの周知、社会福祉協議会による生活資金の貸付制度とのマッチングなどにも力を注ぐ。
 さらに千葉課長は、「就学時援助などはすでに行っているが、おそらく部活動の道具類の購入などが負担になっているケースが多いのだと思う。卒業する子たちの道具を貸し出す仕組みを、NPOと協力して創設するなどしていけたら」と語り、実情に即した具体的な支援策を31年度までに推進するとしている。