〝居心地の良さ〟定着、開設2年で5万人突破/住田町・まち家世田米駅
平成30年5月6日付 1面
住田町が世田米商店街沿いに整備した住民交流拠点施設・まち家世田米駅はプレオープンから2年を迎え、来訪者が5万人を突破した。初年度は古き良きたたずまいを生かした旧菅野家の家屋や蔵などを活用した施設として注目を浴び、2年目は地域住民の利用に広がりが生まれ、初年度を上回る来場者となった。敷地内にある蔵を生かしてゆったりと過ごせる空間づくりの動きもあり、今後も多彩な利用を受け入れる施設活用の取り組みが注目される。
蔵生かした新たな動きも
旧菅野家は、明治後期に建設され、昭和30年代まで増築・改修が行われた。主屋は間口が狭く奥行きが深い構成で、妻入りの町家が立ち並ぶ世田米の景観を象徴づける。
町は、平成23年度に決定した町中心地域活性化構想に基づき整備に着手。構造や部材をできる限り当時のまま残し、レストランやコミュニティカフェ、交流スペース、まちや体験スペース、蔵ギャラリーなどを設けた。地域住民の生涯学習や文化活動などを担う世田米地区公民館機能も入っている。
28年4月29日にプレオープンとして一部を開業。指定管理者制度により、同町の一般社団法人・SUMICA(村上健也代表)が管理・運営を担っている。
SUMICAによると、28年度の来訪者は1万9874人。町が当初見込んでいた1万6000人程度を上回った。来訪者のうち、約6割が地元食材を生かしたメニューを提供しているレストラン「kerasse(ケラッセ)」の利用だった。
29年度は2万8287人と、初年度の1・5倍近い来訪者に。内訳をみると、ケラッセは1万6799人、商店街側の自由にくつろげる交流カフェは6931人、交流スペースは3140人、屋外の広場は1198人、昨年7月以降利用が本格化している蔵は920人となっている。
28、29年度を合わせた来訪者の総計は4万8161人。先月も2周年記念イベント「蚤(のみ)の市」を開催するなどして県内外から来訪があり、プレオープンからの累計は5万人を突破した。
一昨年10月に東京から移住し、ケラッセで腕をふるうシェフ・坂東誠さん(45)は「口コミからのお客さんが多く、ランチの時間帯は気仙沼や釜石、奥州市からも足を運んでくださる」と手ごたえを語る。さらに「もう一度足を運んでもらえるよう、飽きさせない運営をしなければ」とも話し、気を引き締める。
来訪者のうち半数以上が町外在住者といい、交流人口の拡大を生み出す拠点としての役割を果たし続ける。一方で、SUMICAの役員を務め、町地域おこし協力隊としても同施設の活性化を図ってきた植田敦代さん(32)は「地域の方々に施設のことを知ってもらい、気軽に利用する姿が増えてきた。(2年目から始めた)パンや野菜の購入など、さまざまな目的が出てきた」と振り返る。
交流カフェでは最近、地元の子どもたちによる利用で満席状態となる時間帯も。SUMICAではにぎわいの拠点づくりを進めるだけでなく、隣接する蔵が持つ古き良きたたずまいを生かした〝静かな居場所づくり〟の取り組みも始めた。
先月から蔵ギャラリーでは、私設図書館「まちライブラリー・蔵本(くらむぼん)」の開放がスタート。本をきっかけとした人々のつどいを促すとともに、一人でゆっくりと読書を楽しめる席を設けるなど、落ち着いて過ごせる場が生まれた。
村上代表(50)は「落ち着いて過ごせる大人向けの空間づくりも目指し、蔵の利活用は相談しながら進め、新たな魅力を発信していきたい」と今後を見据える。