高田歌舞伎の論文発表、修復で衣装の構造など解明/女子美術大学の阿部氏
平成30年5月11日付 7面

東京都杉並区に本部を置く女子美術大学の非常勤講師・阿部みよ子氏(59)がこのほど、「高田歌舞伎の衣裳に関する研究報告 陸前高田文化財修理をとおして」と題した論文を発表した。同大学は陸前高田市立博物館で行われている被災文化財の修復作業に携わっており、その過程で解明した衣装の構造や縫製方法などが報告されている。
同博物館では、大漁旗や帆といった国登録漁具をはじめ、衣装などの「高田歌舞伎」関連資料を含む約500点の染織資料が、東日本大震災による津波で被災。同大学は平成23年、国立博物館とともに被災文化財の状況調査を実施し、そこで優先順位を決定したのち、翌年から市立博物館の委託を受けて修復を行っている。
大学の教職員や嘱託研究員、学生らが修復作業にあたる中、和服裁縫技術などを専門とする阿部氏は高田歌舞伎について研究。修理前の状態から解体に至る工程を中心に衣装の形態を読み解き、関係資料とのつながりを考察した。
論文では、高田歌舞伎の起源とその経過、女歌舞伎への転換、休演までの経緯を紹介したうえで、平成24〜28年度に修復した歌舞伎衣装22点のうち、解明した資料6点の状態調査と解体調査の結果について説明した。
このうち状態調査では、津波による被害状況に加え、過去に補修した形跡があったことや、汗よけの仙花紙(せんかし、和紙の一種)を付けている衣装があったことなどを報告。一方、解体調査では、判明した衣装の構造や縫製方法のほか、縫い代に検品の印章を確認したことにも言及した。
こうした調査結果を踏まえ、どのような役が着用していた衣装だったのか、縫製方法による仕立ての分類などを判断。また、不明な点があった資料を再調査したところ、震災が原因で混在してしまった高田歌舞伎以外の資料であることも突き止めた。
資料の来歴、用途、使用者に関する考察も行い、来歴では衣装の入手先や制作日時、用途では衣装が使用されたと推測される演目を列挙。使用者については、寸法などから推定身長を割り出した。
今回の研究報告について阿部氏は「形体、文様、縫製技法をとおして、地芝居を主体とした地域芸能を読み解く一要因になった」と記し、「劣化状況の進行を改善するため、適切な対応を行い高田歌舞伎復活のため大切に保管されていた衣裳を復元し、ひきつづき研究を継続していく」としている。