ホタテやホヤ 長引く出荷規制、まひ性貝毒の発生で/気仙
平成30年5月18日付 1面

県内の釜石湾以南で広がっているまひ性貝毒により、気仙地区内でも先月下旬から、ホタテをはじめとする養殖貝類の出荷自主規制が続いている。出荷量の減少は避けられない状況で、養殖漁家ら関係者に大きな打撃を与えている。貝毒発生の詳しい原因は分かっておらず、今のところ事態の好転を待つしかない状況だ。
詳しい原因分からず、養殖漁家らに大打撃
「ホタテを仕入れたくても仕入れることができない。欲しがるお客さんもいるので、県北から買って対応している。ホタテやホヤがないため利益が下がっている。厳しい状況だ」。大船渡市内の鮮魚店店主は険しい表情をみせる。
貝毒の原因となるのはプランクトン。春から夏(一部は秋)に海水中に毒を持ったプランクトンが増え、これをえさにしているホタテ貝類が食べることで毒を持つことになる。下痢性貝毒の原因となるプランクトンはディノフィシス、まひ性貝毒の原因プランクトンはアレキサンドリウムと呼ばれている。
本県では県内を12の海域に区分し、その中に13カ所の監視定点を設けて、ほぼ毎週1回ホタテ貝を検査している。その結果が国が定めた基準を超えると、その海域のホタテ貝の出荷が規制されることになっている。
気仙管内では、まひ性貝毒の基準値を超えたことによって4月10日から大船渡湾西部海域、同南部海域のホタテ貝出荷自主規制措置が取られており、同24日からは三陸町海域のホタテ貝、今月2日からは同海域のマガキ、マボヤ、南部海域(広田湾)のマボヤも出荷自主規制措置が講じられている。
規制解除の条件は、貝毒検査による毒値が3週連続で規制値を下回ることだが、今のところ出荷再開の見通しはたっていないという。
県水産技術センターによると、今年は全国的に貝毒が発生しており、「大船渡湾だけで発生しているのであれば震災の影響ということも考えられるが、かなり広域的に発生しているため、原因はつかめていない」と話す。
気仙管内のホタテ養殖魚家は震災前の300人以上から29年度末時点で140人にまで減少。震災後、一時は生産量が回復をみせたが、近年では減少傾向が続いており、貝毒による出荷規制が追い打ちをかけている。
県漁連によると、29年度の県産ホタテ貝の共販実績数量は2571㌧(前年度比27・2%減)、10㌔当たりの単価は数量不足にともない6491円(同25・6%増)と高騰。
このうち気仙管内の実績は数量が1417㌧(同20・4%減)、10㌔当たり平均単価は6306円(同25%増)となっている。
今年は前年を大きく下回る水準で推移しており、加工業者や鮮魚店などにも大きな打撃を与えている。
県の指導漁業士を務める佐々木淳さん(47)=三陸町綾里=は「本年度のホタテの水揚げは前年度に比べて50%以下になる見込み。海況が激変したのが大きい。稚貝の時に何かしら自然界の影響を受けると、その時の状態を最後まで引きずってしまうので、どんどん歩留まりが落ちてしまう」と話している。