年度内始動へ検討本格化、訪看ステーション開設へ/住田町

▲ 開業費用や今後のスケジュールなどを確認した検討会=住田町役場

 住田町による本年度初の保健医療介護連携体制構築検討会は17日、町役場で開かれた。昨年度に引き続き、医療資源不足を補完する訪問看護ステーションの立ち上げに向けた検討事項を協議。年度内開設を見据え、拠点場所選定や看護師確保の取り組みを本格化させる。気仙では例がない看護小規模多機能型居宅介護(看多機)施設の開設も視野に入れており、医師不足に悩む小規模自治体のモデルを構築できるか、今後の取り組みが注目される。

 

開業医不在対策の〝核〟、さらなる機能拡充も見据え

 

 町内では一昨年、昨年と民間医科診療所の閉院が相次いだ。医科診療機関は、世田米の県立大船渡病院附属住田地域診療センターのみとなっている。
 昨年12月、町は一般社団法人未来かなえ機構に、医療環境整備策として訪問看護事業の検討を要請。同機構は町内に事務所を構え、気仙を主な対象とした地域医療・介護連携ICT(情報通信技術)システム「未来かなえネット」を運営している。
 検討会は開業医不在の状況が続く中でも保健や医療、介護などの各関係者が一層連携し、住民に安心感を与える体制構築を目指そうと、昨年12月に町が設置。メンバーは、同機構理事や県立大船渡病院、県立高田病院、住田町社協、社会福祉法人鳴瀬会、町の各関係者で構成している。
 通算5回目の検討会には、各機関から約10人が参加。前半の協議では、メンバーらが先月視察した首都圏の訪問看護ステーションや看多機事業所などについて情報共有を図った。
 視察先ではそれぞれ、比較的小規模ながら地域の実情に合わせた運営を行っており、民家の借用やボランティアの活用といった特色があった。
 また、看護師や介護士が常駐してデイサービス・訪問看護・訪問介護・ショートステイの複合型サービスが可能な看多機に関しては、説明を聞いた出席者から「早めに立ち上げてほしい」といった発言が相次いだ。
 病院での入院日数は短縮傾向が続き、病院から自宅に戻る間に療養できる施設の重要性も話題に。高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯も増え、インフルエンザなど感染症対策としても早期設置を求める意見が寄せられた。
 また、古民家を改修した施設など、住民やスタッフが居心地の良さを感じられる環境づくりを挙げる発言も。
 「よりあいカフェを開設している場の一画で訪問看護ステーションの立ち上げも面白いのではないか」との声もあった。
 今後の検討事項については、同機構が施設開設のコンサルタント業務を委託している㈱はたらく幸せ研究所=神奈川県横浜市=の藤原貴和子氏が説明。職員規模や、開業費用の想定などを示した。
 看護師確保では、町外からの意欲ある人材獲得に向け、住まい支援なども含めた特色あるアピールの重要性を指摘。公募の活用など町おこしにもつながる展開を提案した。
 今後の計画案では、30年度内に訪問看護ステーションを開設する方針。31〜33年度は順次サービスの多機能化、拡大、充実を見据える。
 訪問看護だけにとどまらない地域に根ざしたサービス展開や介護予防、幅広い世代の健康保持などに波及させる流れを描く。
 出席した佐々木光彦保健福祉課長は「本年度中に立ち上げ、できるところから充実させていきたい」と、出席者にさらなる協力を要請した。
 検討会は6月にも行い、7月以降はより広範な分野の関係者にも参加を求め、医療資源不足を補う体制づくりを進める。