視点/住田町・少子化進む中での小中学校運営は

▲ 5地区で実施した教育懇談会=上有住

「未来像」広く議論を
教育懇談会で意見交換

 

 住田町教育委員会は23日まで、町内5地区で教育懇談会を開催した。教委側は本年度から5年間を期間とする第9次教育振興基本計画を説明し、少子化が進む中での小中学校のあり方について話題を向けた。意見交換では10年後、20年後の子育て環境充実・維持を見据え、より柔軟な発想で将来像を描いていく重要性が浮き彫りに。学校の適正規模だけにとどまらず、住民が将来生活に前向きな希望を見いだせるような議論の広がりが求められる。(佐藤壮)

 

前向きな希望どう描くか

 

 五葉、大股、上有住、下有住、世田米の順で開催した懇談会。教委では地域ぐるみでの教育環境充実を目指している中、今回初めて5地区を回る形で実施した。各会場で菊池宏教育長はこう語りかけ、出席者に意見を求めた。
 「子どもの数の回復は、当分見込めない。10年後、20年後の学校のあり方を議論しないといけないのではないかという危機感がある」。
 現在、町内の保育園は世田米、有住の2施設で、小中学校も2校体制。平成27年度に町が策定した人口ビジョン・総合戦略・総合計画では「小学校2校を維持することを目標に設定し、複式学級を回避するために1学年20人、2校で40人を確保」を掲げる。
 中学校は小学校の2校維持が達成できれば現状を維持できるとし、第9次計画では「両中学校の歴史と伝統の校風を継承する方向を重視」としている。
 「2校で1学年40人」を確保するには、町内児童が240人以上いなければならない。本年度の児童数は180人余りで、有住小では5、6年生が複式学級。町内の出生数は、20人未満の年も出ている。

 教委側は「統合ありき」ではない姿勢を掲げ、出席者から率直な思いを引き出そうとした。各会場とも、住民側の出席者は10人未満。実際に子どもが小中高校に通う保護者世代は少なく、深い議論に至らない会場もあった。
 しかし、教委関係者と住民とのやりとりでは、統合計画がない今こそ、少子化に伴う不安や課題を丁寧に拾い上げ、その解決に向けて何をすべきかを見いだす必要性が浮き彫りになった。
 例えば、部活動の問題。保護者の一人から「チームが成り立たず、希望を持って取り組めないのはかわいそう」との声が上がった。単独校では人数が足りず、合同チームで出場する動きは珍しいものではなくなっている。
 別の住民からは「英語やプログラミングなど新しい教育が入ってくる中で、児童数が少なくても専門的な教師を確保できるのか」といった不安も。切磋琢磨できるかや、人口が多い都市部との教育格差を懸念する声もあった。
 教委側は「学校のあり方は多様になっている」との説明。〝住田学園〟として世田米と有住に各校舎を設け、部活動は一つになって行う、といった可能性も話題となった。
 さらに、9年間の義務教育学校で、小中学生世代が通う大槌町立大槌学園も紹介。町が防災協定を結ぶ山梨県丹波山村は人口が600人に満たず、村内の小中学校はいずれも在籍児童生徒数が10人台でありながら、村独自で教諭を確保して複式学級にせず、一人一人に行き届いた教育を目指している現状も示した。

 会場によっては「一つになることを明示し、その中で話し合うべきでは」と、統合を視野に入れた動きを望む声もあった。半面、町内1校体制は通学や放課後の過ごし方など生活全体が大きく変化するとの懸念も。文化活動や運動会など、各校で継承されている部活動以外の良さも重視すべきとの意見もあった。
 さらに「人数が少なければ、先生との距離が近い」と、小規模校の強みを挙げる発言も寄せられた。「1学年20人を維持するためにどうするかの施策を」と、町をあげた移住・定住促進策の重要性を掲げる出席者もみられた。
 5地区での懇談会を終えた菊池教育長は「出された意見は、これからの教育に生かせるものばかり。今後も広く意見を聞いていきたい」と語った。
 懇談会で住民からは「(少子化には)不安というよりも、あきらめがある」といった声も出た。新たな学校のあり方を考える議論に、地域住民が前向きな希望を描けるかも重要となる。保育環境や子育て支援、県立住田高校存続策も含め、細やかに声を拾い上げながら一人一人の充実を図る取り組みが求められる。