気仙をトマト・イチゴの名産地に、県が多彩なPR事業実施へ

▲ 気仙で生産されるトマトとイチゴをPRする多彩な事業を手がけていく=米崎町

 県大船渡農林振興センターは本年度、気仙で栽培されているトマトとイチゴの消費拡大、販売単価向上に向けたPR事業に力を入れる。小売店、加工業者ら向けのほ場見学会や地元菓子店と生産者のマッチング支援に加え、秋以降にはトマト、イチゴを使ったスイーツコンテスト、住民らに魅力を伝えるフェスティバルなどを開催する計画。県内でも有数の施設園芸産地となるよう機運を高めていく。

 

 消費拡大、単価向上目指す/スイーツコンテストも構想


 東日本大震災で大打撃を受けた気仙の農業。生産者の高齢化も進み、県によると、ピーク時(平成元年)に64人いたイチゴの栽培者は平成27年に14人まで減少し、担い手不足が課題となっている。
 この状況下、陸前高田市は27年1月、施設園芸農業の推進を図る生産拠点として米崎町内の浸水地に大規模園芸施設を整備。広さ3600~4100平方㍍の軽量鉄骨造の農業用ハウスが計4棟建てられ、1号棟ではイチゴ、2~4号棟ではトマトを栽培している。
 また、市内では今年、イチゴ農家が横田町内で施設栽培を開始。大船渡市内では、葉菜・果菜類の水耕栽培などを手がける民間会社(紫波町)が、津波で被災した末崎町の住宅団地跡地を活用し、トマトを周年栽培する園芸施設を整備している。
 こうした施設園芸振興への新たな動きを踏まえ、県大船渡農林振興センターは本年度、「気仙トマト・いちご王国プロジェクト促進事業」を始動させた。気仙で生産される高品質なトマト、イチゴの消費拡大、販売単価向上に向けたPRを行っていく。
 具体的な事業の企画・実施については、気仙3市町、農協、県、農業の関係団体でつくる大船渡地方農業振興協議会に委託することとしている。
 現段階で構想している事業は▽生産ほ場見学会▽マッチング支援▽トマト、イチゴの「スイーツコンテスト」▽「気仙トマト・いちごフェスティバル」──など。
 ほ場見学会は小売店、加工業者や野菜ソムリエを招き、高度な栽培技術を用いている生産現場を見てもらうとともに、ブランド化を目指す作り手側の思いも伝える。マッチング支援は生産者と地元の菓子店などを対象に行う。
 スイーツコンテストは10月以降、トマトとイチゴの2回に分けて行う。
 来年2月ごろを予定する「フェスティバル」ではコンテストで募ったスイーツ作品の表彰式、トマト、イチゴの展示・販売会などを実施することとしている。
 米崎町の大規模園芸施設を管理している㈱JAおおふなとアグリサービスの佐藤忠志管理部長は「トマト、イチゴともに品質の高さには自信を持っているが、販売単価が目標に届かないなど課題も多い。関係機関・団体と力を合わせ、魅力を伝えていきたい」と意欲を語る。
 同センター農業振興課の平山博之課長は「気仙が岩手の中でも施設園芸の名産地と認知されることを目指す。将来的に就農者の増加などにつなげていきたい」と力を込める。