住田高校の支援策強化へ、町教委が独自事業で教育コーディネーター活用

▲ 聞き取り調査の内容を報告する小宅さん㊧=農林会館

 住田町教育委員会は本年度、県立住田高校へのさらなる支援強化を見据え、独自で採用した教育コーディネーターを活用するなどして、生徒や保護者、地域のニーズに合った展開を模索している。29日には、教育コーディネーターが生徒や教諭、保護者らに行った聞き取り調査の内容が報告され、生徒の大半を占めるバス通学の悩みなどが示された。町教委では今後、住田高校生の多様な挑戦や交流を支える町内での「居場所づくり」を検討するとしており、新たな魅力創出につながるか今後の取り組みが注目される。

 

 

 町内唯一の高等学校である住田高校は本年度創立70周年を迎えた。近年は1学年定員が1学級40人と小規模ながら、ボランティアをはじめ特色ある活動を展開している。
 一方で、県教委による県立高校再編計画では、住田をはじめとした1学級校は入学者数が2年連続で20人以下になった場合、原則として翌年度に募集停止となり、統合を進めるとしている。本年度の入学者は22人。町内のみならず気仙全体で少子化が進行しており、今後の生徒確保には厳しい見通しもある。
 町はこれまで、教育振興事業として給食の無償提供を実施。通学距離が6㌔以上の生徒を対象にバス定期券料金の3分の2を補助している。さらに、オーストラリアへの生徒派遣や部活動活動費の補助、英検受験料を町が全額負担するといった支援を進めてきた。
 本年度は、さらなる魅力づくりにつながる有効な支援策を打ち出していこうと、教育コーディネーターとして小宅優美さん(28)を採用した。
 小宅さんは福島県いわき市出身。筑波大学大学院生時代、住田町にU・Iターンする若者のコミュニティー形成過程に注目し、若者が積極的にかかわる地域づくりの研究に携わった経験を持つ。
 4月に着任して以降、中学校教師や住田高校生、同校の保護者や教諭、卒業生、地域住民らに聞き取り調査を実施。その内容を示し、今後の支援の方向性を提案する説明会が29日に農林会館で開かれ、町関係者ら約20人が参加した。
 住高生の現状を理解する視点の一つとして、バス通学の声を紹介。生徒の過半数が利用する半面、バスの本数が限られており、ダイヤに合わせた行動をしなければならないという。「バスの待ち時間を過ごせる場所がない」「テスト期間中などが、とくに困る」といった声に加え、町外から通う生徒たちが町のことをよく知らないまま3年間過ごすとの指摘も挙げた。
 さらに「家以外で勉強できる場所がない」との声も。半面、学校の良さとして、生徒と教諭との距離の近さや、小型車両系建設機械の資格を学校ぐるみで取得しているといった特色も示した。
 地域住民や卒業生の住田高校に対する意見も紹介し、小宅さんは「住高生のチャレンジを応援する『住高生の居場所』を地域につくることで、子どもの声を尊重できるのでは」と総括。高校生が、地域を巻き込みながら意欲的に創作活動に励み、幅広い人々と交流する環境づくりの大切さを強調した。
 そのうえで「『与える』支援だけをどうするかではなく、町の人と一緒に活動していくということが必要なのでは」と語った。生徒が町内で多様な活動に取り組める「居場所づくり」の整備は今後、具体的な検討を進めることにしている。
 住高支援策については、14~23日に町教委が町内各地区で実施した教育懇談会でも話題となり、住民からは生徒数確保に向けたPR策強化や、町外から生徒が来るための環境整備を望む声が多く寄せられた。
 菊池宏教育長は「地域が一体となった子どもたちへの支援策をどのような形でできるのか、今後のあり方を探っていきたい」と話している。