平成の気仙の歩み1―本紙報道から振り返る―

▲ 昭和天皇の崩御と平成のスタートを報じる本紙

 1989年(昭和64)1月7日に昭和天皇が崩御され、翌1月8日から始まった平成。天皇陛下は来年4月30日で譲位され、翌5月1日には皇太子さまが即位され、元号が変わる。残り1年を切った平成の気仙での出来事を本紙報道から振り返っていく。(名称などは当時のもの)

 

新しい時代の幕開け/平成元年(1989)

 

 【1月】▽天皇陛下崩御、激動の昭和に幕。皇太子・明仁殿下が皇位継承。政府は新元号「平成」を制定
 【2月】▽県と大船渡市が猪川町冨岡で進める福祉の里整備事業推進計画が国の承認を得た▽集団風邪が猛威。気仙の小中学校で学年・学級閉鎖が相次ぐ
 【3月】▽気仙など沿岸南部7市町による「さんりく・リアス・リゾート構想」が国のリゾート法の承認を受ける▽住田町の日鉄鉱業大洞鉱業所が合理化のあおりを受けて38年間続いた石灰石採掘を停止し休山
 【4月】▽消費税スタート。気仙地区でも新税導入に混乱▽気仙初の大型リゾートホテル、高田松原シーサイド・キャピタルホテル1000がオープン
 【5月】▽県は平成元年度の地域活性化事業調整費として大船渡地方振興局に2400万円を配分。リゾート関連主体に20事業に活用▽古川沼をきれいにする会(陸前高田)が環境庁の水環境賞受彰。美化活動に高評価
 【6月】▽〝門外不出〟だった吉田大肝入文書の原本を陸前高田市立図書館で保管へ▽キッピンアワビの王国復活へ、吉浜漁協が年産30㌧を目指す生産計画を策定
 【7月】▽三陸町の第三セクター・三陸町ふるさと振興設立▽任期満了に伴う住田町長選で元同町議会議長の新人・菅野剛氏が無投票初当選▽三陸縦貫自動車道大船渡・三陸道路に34億円の事業配分
 【8月】▽さんりく・リアス・リゾート推進協議会が発足。沿岸7市町の官民が連携し、リゾート構想具体化目指す▽潜水調査船「しんかい」が大船渡港を基地に、三陸沖で水深6527㍍の潜航試験に成功、世界最深記録更新
 【9月】▽連合岩手の気仙における地域組織、気仙地区協議会が正式旗上げ▽陸前高田市のトレーニングセンターに男が侵入し、現金約20万円を奪い逃走
 【10月】▽陸前高田市と県南中央部を結ぶ国道343号・小黒山ループ橋完成▽任期満了に伴う三陸町長選で現職の刈谷孝一氏が無投票再選
 【11月】▽三陸沖で群発地震。2日未明にはマグニチュード7・1の地震により津波警報が出た。震度4の大船渡で最大波高24㌢記録▽県が住田町世田米子飼沢地内に建設を計画した津付ダム予定地の地権者会結成
 【12月】▽菅野俊吾陸前高田市長が、広田半島・仁田山地区でのゴルフ場建設計画の白紙撤回を表明▽岩手県交通と国際興業が、大船渡―東京間の高速直行バス「けせんライナー」運行開始

 

時のキーワード 

 

―さんりく・リアス・リゾート―


 バブル経済に沸いていた昭和62年、民間の能力活用を大きな柱に据えてリゾート開発を推進する国の総合保養地域整備法、いわゆる「リゾート法」が制定された。地域振興につながるものとして全国でリゾート構想の策定が相次いだ。
 本県沿岸の4市3町(大船渡市、陸前高田市、住田町、旧三陸町、釜石市、遠野市、大槌町)を対象とした本県の「さんりく・リアス・リゾート構想」もその一つ。当初、地元や中央の企業44社が約1600億円もの投資を予定。4市3町合わせて206施設の整備や改修などを描いた。
 気仙では大船渡市のおさかなセンター、世界の椿館・碁石、海洋スポーツセンター、陸前高田市の県立野外活動センター、海と貝のミュージアム、キャピタルホテル1000、住田町の種山ケ原体験交流センターなどが完成したが、その後の経済状況の悪化などで、とん挫。供用施設、投下事業費とも計画の2割にとどまった。
 国は平成16年に基本方針を変更して各都道府県に構想見直しを求め、さんりく・リアス・リゾート構想は同18年で廃止。リゾート施設を旗印として観光客誘致を図る〝夢〟は画餅に帰した。
(週1回掲載)