広田町民も花添える、盛岡で「東北絆まつり」/きょうから2日間(動画、別写真あり)

▲ 熱を込めた練習を行うメンバーたち=広田町

 東北各県を代表する祭りが盛岡市に集結し、2日(土)、3日(日)に開催される「東北絆まつり」を、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市広田町の町民らもさまざまな形で盛り上げる。郷土芸能団体「赤磯太鼓─ARATA─」(西條和志会長)はメーン会場で太鼓演奏を披露。別会場では船大工の村上央さん(75)が手がけた木造の川舟が展示され、卓越した伝統の技を観光客に伝える。

 

感謝の思いバチに込め
赤磯太鼓

 

 盛岡城跡公園の多目的広場では2、3の両日、パレードに参加する「盛岡さんさ踊り」など東北6県代表の祭りに加え、本県内の26団体が郷土芸能を披露する。
 2日のアトラクションオープンニングトークのあと、26団体のトップを飾ってステージに立つのが「赤磯太鼓」。震災支援への感謝と復興への思いをバチに込める。
 団体の設立は平成27年7月。4年に1度行われる黒崎神社式年大祭で奉納するため継承されてきた赤磯太鼓にスポットを当て、「地域に根ざした太鼓文化を築こう」と地元有志が集まった。
 練習は週に3回、旧広田保育園で行われている。打ち手は20〜40代の15人で、当初初心者ばかりだった集団はメキメキと上達し、地元のイベントを中心に年10回ほど公演している。
 持ち曲は、戦で荒らされた地域が祭りを機に再興する様子を表現した『波濤萬里(はとうばんり)』と、激しいバチさばきで魅了する『魂〜SOUL〜』の2曲。ともに石川県小松市の太鼓団体「打族」のオリジナル曲で、交流があったメンバーがいた縁から特別に曲を借りている。
 本番1カ月前から、日曜日を除いて毎晩集まり猛特訓。昨年、一般財団法人・自治総合センターの宝くじ助成金を受け、新たに大太鼓や長胴太鼓など13張をそろえ、充実した練習を重ねた。
 指導役を担う志田真梨子代表(40)は「打族さんからお借りしている曲なので、恥ずかしい演奏は絶対にできない。津波でかけがえのないものを失ったが、赤磯太鼓を結成したように新しいものも生まれているということを伝えたい」と意気込む。
 絆まつりには、気仙から赤磯太鼓のほか、大船渡市の赤澤鎧剣舞、住田町の高瀬鹿踊が3日に出演する。


村上さん建造の川舟展示

絆まつりに展示する川舟を手がけた村上さん=広田町

 村上さんは、盛岡市の商店街組合や町内会など8団体で構成する「北上川に舟っこを運航する盛岡の会」(村井軍一会長)からの依頼を受け、4月中旬から約1カ月かけて川舟を建造した。
 長さ3・7㍍、幅1㍍ほどで、サッパ船とほぼ変わらぬ大きさ。主にスギの木を用い、船首や船尾部は頑丈なクリやヒノキの木を使った。村上さんによると、県内の川舟の構造が沿岸と内陸部で微妙に違うといい、数十年前に手がけた一関市の川舟の図面を思い起こしながら仕上げた。
 同会は、江戸時代に住民らの生活を支えた北上川の舟運を再現し、観光振興や地域の魅力発信につなげようと、昨年2月に設立した住民組織。「絆まつり」での川舟展示は、舟運文化復活の機運を高めようと企画した。
 8月には、同会や盛岡市などで組織する実行委員会が「北上川フェスタ IN MORIOKA」を開催する。同フェスタの中で、村上さんが今後新たにつくる長さ7㍍の木造船で川下り体験を行うこととしている。
 同会事務局で、盛岡駅前東口振興会の阿部優会長(57)は「匠の技がつまった見事な舟をつくってもらった。舟運文化復活と被災地も頑張っているという思いを大勢の人に伝えられれば」と期待を込める。
 震災後の漁船新造の〝特需〟も落ち着いたが、この数年、村上さんのもとには、船大工歴60年ほどの腕を口コミで聞きつけ、レジャーボートや屋形船など漁船以外の建造依頼が県内外から舞い込んでいる。
 村上さんは「今回が最後かもしれないと常に思う中、予想外な注文があり仕事を続けられている。絆まつりでも新たな縁ができた。満足いく仕事ができる限り頑張りたい」と意欲を語る。