〝若い力〟引き合い強く、職安の求人受理始まる/気仙

▲ 新規高卒予定者の求人受け付けがスタート。初日に手続きに臨む太平洋セメント大船渡工場の担当者=大船渡職安

 来年3月の新規高校卒業予定者を対象とする事業所の求人受け付けが1日、全国の公共職業安定所で一斉に始まった。生徒数の減少もあいまって、東日本大震災以降、求人倍率が高水準を維持し、「売り手市場」が続いている気仙地区では同日、大船渡職安(三上元詔所長)に事業所の担当者が早い時間から続々と足を運び、自社や地域発展に向けた新戦力の確保へ意欲をみせていた。

 

 来春高卒予定者向け、事業所の採用意欲衰えず

 

 新規高卒予定者を対象とした職安の求人受け付け開始日は例年6月20日だったが、全国高等学校長協会、主要経済団体、文部科学省、厚生労働省による検討を経て、昨年から1日に前倒しされている。
 大船渡職安が担当する気仙地区では、景気低迷などを背景に震災前数年は地元求人の出足は鈍かったが、震災以降は23年度(24年3月卒業者)から2倍を超え、29年度(30年3月卒業者)は4・12倍に。復興需要の高まりだけでなく、少子化による地元就職希望者の減少も求人倍率を押し上げる要因となっている。
こうした中で迎えた今年の初日は、製造業や小売業など48件188人の求人があった。昨年の初日に比べて件数は変わらなかったが、人数は41人の増となっており、事業所の採用意欲は今年も引き続き高さを保っていることを示す数字となった。
 このうち、大船渡市赤崎町の太平洋セメント㈱大船渡工場(伊沢良仁工場長)では、セメント製造技術者として高卒予定者4人の採用を計画。尾上浩業務部長(49)と同部総務課の金野桂一さん(50)が、午前中のうちに同職安を訪問した。
 同工場では例年、新規高卒者の地元採用は定年退職者を補充する形で5人前後としている。生徒数が減少の一途をたどる中、一昨年からは女子生徒も対象に加え、トイレや更衣室の整備など働きやすい環境づくりを計画的に進めているという。
 手続きを済ませた尾上部長は「震災後、仕事を通じた復興支援への恩返しを志望動機とする生徒が多い。その思いを大切に、気仙の発展に力を合わせてほしい」と若い力に期待を寄せていた。
 同職安によると、今年3月の気仙地区内高校、支援学校卒業者560人のうち、求職者は131人で全員の就職が決まっている。このうち、気仙で就職したのは69人。事業所からの求人数は284人で、求人倍率4・12倍は直近10年で最高値だった。
 来年3月卒業予定者は517人。同職安の現段階の把握では、このうち116人が就職を希望しており、53人は気仙地区内で働きたい意向を示しているという。
 旺盛な復興需要は落ち着きをみせつつあるが、気仙の高卒予定者数は10年前と比べて180人減るなど、生徒数の減少は事業展開への大きな壁ともなっている。
 今年も求人数と求職者数には開きが生じるものとみられ、三上職安所長は「例年、求職者数はいまの時期から増えていく傾向があり、動向を注視したい」としている。
 企業による学校への求人申込・訪問の開始日は7月1日、学校から企業への生徒の応募書類提出開始日は9月5日、選考と採用内定開始日は同16日で、いずれも従前通りのスケジュールとなっている。