賢治が愛した自然楽しんで──種山高原で「山開き」(別写真あり)

▲ ツツジなどが見ごろを迎える中でハイキング=種山高原

 住田町や奥州市にまたがる種山高原の山開きは3日、同高原の物見山中腹にある種山高原キャンプ場で行われた。来訪者はレンゲツツジなどを目にしながらハイキングを満喫したほか、キャンプ場では郷土芸能披露や売店開設もあり、活気に包まれた。宮沢賢治が愛した雄大な自然と空の魅力にあふれる種山も夏の観光シーズンに入り、今後のにぎわいが期待される。


 北上高地の南西部に位置する種山高原は物見山、大森山、立石などの総称で、東西11㌔、南北20㌔に及ぶ。緩やかな稜線の準平原地形と冷涼な気候から、藩政時代は馬の放牧地として利用された。
 宮沢賢治がこよなく愛した高原としても知られ、風景や気象を題材に童話「風の又三郎」「種山ヶ原」、劇「種山ヶ原の夜」を残した。また、賢治作品の源泉となった岩手の自然風景地「イーハトーブの風景地」の一つとして、物見山が国の史跡名勝天然記念物に指定されている。
 山開きは、住田町と奥州市で構成する種山高原観光協会(会長・小沢昌記奥州市長)が主催。自然を生かした憩いの場、観光地が充実している種山の発信などを図ろうと毎年開催している。
 レンゲツツジが咲き誇るキャンプ場での神事には、両市町の行政や観光、商工団体関係者ら約20人が参列。小沢会長は「気軽に来ることができ、賢治にゆかりある場所。多くの人々が訪れ、楽しんで、リフレッシュしてほしい」とあいさつした。テープカットも行われ、夏山シーズン到来を祝った。
 昨年は悪天候で安全祈願式典のみの開催となったため、イベントは2年ぶりの開催。今年は青空が広がり、屋外で過ごすには絶好の一日となった。
 キャンプ場から出発したハイキングは、すみた森の案内人(吉田洋一会長)の会員が先導。幅広い世代の参加があり、すがすがしい空気を吸いながら種山に生息する植物たちに理解を深めた。
 参加した奥州市立岩谷堂小学校3年の髙橋瑠奈さん(8)は「ハイキングは、一昨年も参加した。いろいろな花が咲いているのを見るのが楽しい」と笑顔。北上市立黒沢尻北小学校2年の赤平悠真君(7)は「種山は広くて、気持ちいい」と話していた。
 事務局によると、この日は地元内外から約1000人が来場。キャンプ用のテントも多くみられ、活気が生まれた。
 会場では奥州市の「種山ヶ原太鼓」「奥山行上流餅田鹿踊」や住田町の「楽ちん一座」の演舞、演奏披露が続き、訪れた人々は草地の上でくつろぎながら鑑賞。町PRキャラクター・すみっこなどが参加する「ふれあい大運動会&握手会」も行われた。
 山開き恒例のジンギスカンや、地元団体の温かみが伝わる軽食販売も充実。訪れた人々は多彩な企画を楽しみながら、種山の自然に親しみを深めていた。