同級生ら思い浮かべて、赤崎町の佐々木さんが還暦祝いの記念品製作/大船渡

▲ 同級生の還暦祝い記念品として佐々木さんが製作したミニ臼ときねがズラリ=赤崎町

 大船渡市赤崎町の木彫工作家・佐々木淳一さん(59)=木ばくり工房=は、今月下旬に開かれる同級生の還暦祝いに向け、記念品を製作している。希望する同級生たちに贈られるもので、記念品に選んだのは縁起のいいミニ臼ときねのセット。今年1月以降、同級生たちの顔を思い浮かべながらコツコツと作っており、佐々木さんは「みんなに喜んでもらえればうれしい」と話している。

 

ミニ臼ときねのセット

 

 佐々木さんは同町の出身で、昭和48年度の赤崎中学校卒業生。30年余りにわたり木臼や木彫置物、剣舞面、折れた木製バットを使った靴べらなどを作り、東日本大震災後は被災した獅子頭の修復などにも携わっている。
 赤崎中時代の同級生は約100人おり、20年前の42歳歳祝いでは男性の厄払いにちなんで権現様の獅子頭を製作。最初は男性のみに向けて作ったが、女性陣からも希望が多く、約70個を2年ががりで完成させて同級生たちから好評を博した。
 それから年月がたち、実行委員会(鈴木弘委員長)の主催による同級会と還暦を祝う会が今月23(土)、24(日)の両日、花巻市内で催されることに。47人が参加予定で、実行委では今回も記念品の製作を佐々木さんに依頼した。
 記念品は、ミニサイズの木臼ときねのセットに決定。「臼ときねは餅つきなどに使われ、祝い事には欠かせない存在。縁起がよく、還暦祝いの記念品に合うのでは」と佐々木さんが提案したという。
 同級生のうち、希望者36人に配布することとし、今年1月中旬から製作を開始。また、20年前に手がけた獅子頭も津波で流失した同級生がいることから、希望する7人のために作り直すこととした。
 臼ときねの材料に用いたのは、数年前まで陸前高田市内にそびえていた1本のケヤキ。樹齢200年、幹の直径は約1㍍20㌢あった大木で、伐採後に佐々木さんが譲り受けていたという。
 「1本の木から作り、〝同級生みんながつながっている〟という思いを込めた」と佐々木さん。臼は枝の部分から材料を切り出し、機械で外側を削り、内側は手作業で彫り進めた。「外側はある程度機械で彫れるが、ミニサイズなので中側を彫るのは細かくて大変。慎重な作業が求められた」と振り返る。
 外側の仕上げ塗りなども施し、完成した臼の大きさは直径、高さとも18㌢。きねは飾り物だが、臼は小さいながらも1人分の餅がつけるように仕上げた。
 予備も合わせて約50セットを用意。佐々木さんは「縁起物なので、けがをしないよう作業にあたり、同級生一人一人の顔を思い浮かべながら手を動かした。みんなに喜んでもらえれば」と話す。
 臼ときねの製作にはめどがつき、現在はキリ材を用いた獅子頭の仕上げ作業中。今回は目や歯に金ぱくを施した特別仕様だという。
 佐々木さんが手がけた記念品の数々は、祝う会当日、神社での祈とうを経て希望者らに贈られる。
 鈴木委員長(59)は「佐々木さんは同級生の宝であり、還暦という節目でもあったので記念品製作をお願いした。元気で長生きしてという気持ちを持って作ってもらっている。受け取ったら大事にしていきたい」と完成を楽しみにしていた。