〝二又サロン〟利用者に好評、サポーターと高齢者が交流/陸前高田(動画、別写真あり)
平成30年6月12日付 1面

少子高齢化が加速し、世代間での共助体制構築なども課題となる中、陸前高田市矢作町の市国民健康保険二又診療所(石木幹人所長)は、診療所隣にある医師住宅を昨年末からサロンとして地域住民らに開放している。地元の「サポーター」らの協力を受けながらおおむね月2回、高齢者が娯楽を楽しんだり、健康維持のための拠点として利用。ここで顔を合わせる人たちが自然と支え合える体制づくりや、健康寿命延伸の取り組みモデルとして、同様の拠点が各地に形成されていくことも期待される。
共助の体制を構築
診療所の医師住宅を活用
平成22年から空き家になっていたという医師住宅のサロン利用は、少子高齢化の問題を解決する地域体制構築を願う石木所長の思いから動き出したもの。活用・運営方法についての参考にしようと、平成29年9月には矢作町内の3会場で住民らによる意見交換会が実施された。
実際の活動は同年12月に始動。同診療所と陸前高田まちづくり協働センターのほか、町民らを中心に集まった13人のサポーターが運営を支える。
開催は基本的に月2回。医師住宅には和室4、洋室1、台所などがあり、集まった人たちは各部屋で花札や将棋に興じたり、ジグソーパズルで〝脳トレ〟に励んだりと、それぞれの楽しみに没頭。石木所長による健康講話や花見、芋煮会などのイベントが行われることもある。
集まった人たちは100円ずつ出し合ってお茶代にしているといい、おおむね午前10時~正午の時間を、コーヒーなどを飲みながらゆったり過ごす。懐かしのメロディーをみんなで歌うのも恒例となっており、女性だけでなく男性らにも好評を博す。
こうした〝お茶っこ飲み〟の場では、運営する側が「女性は積極的だが、男性の参加率が低い」と悩むケースがみられる。事前の意見交換会でもこの点が指摘されていたが、二又サロンでは男性参加者の姿も数多い。診療所を訪れる人が待合時間や診察後に立ち寄るといった〝ついで利用〟もあり、参加のハードルが低い点も特徴だ。
「みんなで昔話をできるところがいい」「石木先生に健康についての話を聞いたりするから、病気もふっとばせる気がする」と男性利用者らは語り、「今は診療所とここ(医師住宅)が別棟で、玄関からぐるっと回ってこなければならないが、渡り廊下でもできればもっと参加者は増えるはずだ」としている。
サポーターの佐藤純子さん(68)らは、「毎回楽しんでくれているようで、終わりの時間が来てもみんななかなか帰りたがらない」と笑う。この日は全員で鳴子を手にし『寄さこい見さこい陸前高田』を踊り、互いに「踊りっこ、覚えてない」と言いながらもにぎやかに輪踊りを満喫した。
また、実施日のうち毎月最終火曜日は基本的にウオーキングをすることにしているが、これは利用者側からの発案という。
佐藤さんは「季節の景色を楽しめるよう時期によってルートを変え、飽きさせない工夫をしている。自宅前から加わる人がいたり、町内でワカメの芯抜き作業をしている人たちが仲間に入ることも。『みんなと一緒なら続けられる』という人が多く、お茶飲みだけの時より参加者が増える」と説明。楽しみながら無理なく健康づくりに取り組む、住民らの積極的な姿勢がうかがえる。
「あらゆる世代が集まり、交流できる拠点は近くにあるのが理想」とし、「医師住宅でのサロンが一つのモデルとなり、拠点づくりの取り組みが各地に広がれば」という石木所長の思いから誕生したサロン。同診療所はさらに幅広い年代の人が、サポーターなどとしてかかわってくれることにも期待を寄せている。
サポーターに関する問い合わせは、同診療所(℡58・2220)まで。