暮らしの課題で論戦、産業や子育ての施策ただす/陸前高田市議会

▲ 一般質問2日目は4議員が登壇=陸前高田市議会

 陸前高田市議会6月定例会は13日、前日に続いて一般質問が行われた。大坂俊(至誠会)、三井俊介(新風)、大坪涼子(日本共産党)、藤倉泰治(同)の4議員が登壇し、被災低地部の資産価値や起業などによる産業創出、移住定住促進のための施策、安心して子どもを育てることができる環境づくりなどについて当局と論戦。起業や移住定住者獲得、他市町村との差別化の図り方にかかる答弁の中で戸羽太市長は、「陸前高田市は日本の〝課題先進地〟。ソーシャルビジネスを生むことで地域課題を解決している場所として、市の特色を出していきたい」と述べた。

 

 一般質問に4議員が登壇

 

 トップ登壇の大坂議員は、防災集団移転促進事業の移転跡地活用に関し、導入しうる事業や被災低地部の土地の資産価値などを質問。熊谷正文復興局長は、「移転跡地の買い取り面積は約126㌶で、これまで水産業共同利用施設、コミュニティー広場の整備などを行っている」とし、被災低地部の土地の資産価値の変動については、震災前の平成23年と今年1月1日で比較すると、宅地が1〜5割の減価となっている地域がある状況を説明した。
 被災低地部の資産価値が低下する中、事業導入されていない土地の扱いや、今後の利活用の施策を問われた戸羽市長は、「土地の価値が低い状態が続けば固定資産税としての税収も減るため、市としても深刻に考えている。まずは土地を利活用しやすい環境をどうつくるか国と協議し、地域の方に有効利用してもらえる方策を考えていく」と述べた。
 三井議員は、計画期間が残り2年を切った「まち・ひと・しごと総合戦略」にかかる現時点での総括を求める中、昨年同市で実施された起業プランコンテストに対する所感や、新しい産業創出の可能性など、今後の展望について質問した。
 戸羽市長は、「コンテスト開催により、起業しようという機運が醸成されたと感じている」としたうえ、「市としては31年度末までに、コンテスト応募者から5件以上の起業者を創出すると掲げており、本年度は中心市街地に創業支援を見据えたチャレンジショップの建設を予定している」と説明した。
 さらに村上知幸商工観光課長は、「今年はもっと早い段階から起業や第2次創業を目指す方々に周知を図るとともに、民間企業からの協賛も得て、さらにいい形で開催したい」と今後の見通しを示した。
 また、同議員から「全国からの移住希望者に選ばれる、社会的機能が高いまち」としてのあり方などについて問われた戸羽市長は、「本市がビジネスプランコンテストを開催する背景には、このまちに仕事を生みながら地域課題に取り組んでもらいたいという思いがある。少子高齢化や公共交通など、日本全体が抱える課題解決に向けてチャレンジできる場所が陸前高田なんだという位置づけを私も強く意識している」と語った。
 大坪議員は、現時点では民間アパートなどが市内に少なく、新しく家庭を築く若い人たちや移住者にとって住まいの確保が難しい現状を踏まえ、市の対応を確認。当局は今後、災害公営住宅を被災者以外にも貸し出す方針があることを説明した。
 一方で、災害公営住宅が通常の市営住宅扱いとなった場合、入居要件などのハードルがあることから、「若者が入居しづらいのでは」という同議員の質問に対し、菅野誠建設課長は「県との間でも、I・Uターン者向けの入居基準を設けることはできないか協議していこうという話が出ている」とし、広く入居が可能となるような方法の検討も視野に入れていることを示した。
 大坪議員は、同市における子どもの貧困率が約14%にのぼる現状を踏まえ、「子ども食堂」の実施状況も確認。このうち、NPOが中心となり高田町で開かれている「子ども食堂」について、千葉達子ども子育て課長は「子どもだけでなく、保護者も一緒に食事をとり、家事負担の軽減を図りながら悩み相談もできる場所になっているようだ」と現状での認識を示した。
 同議員の「子ども食堂については、貧困家庭だから利用しているといった差別が生まれないような取り組みも必要では」という指摘に対して千葉課長は、「世帯の収入に応じて子どもの貧困率を算出しているものの、『収入はあるが支出も多い』といった理由で実質的な貧困に陥っているケースも考えられ、このパーセンテージに反映されていない家庭もあると思う。単純な線引きを行わず、必要な世帯に支援がいくような方策を考えていきたい」と答弁した。
 藤倉議員は、市が維持管理業務を個人に委託している陸前高田斎苑について「現状と課題をどう認識しているか」と尋ねた。千葉恭一民生部次長は、勤務体制が不規則であり、業務内容も特殊であるため安定運営が難しいことや、施設の老朽化などを課題として挙げた。
 そのうえで戸羽市長は、「斎苑のみならず、庁内の業務内容の見直しを行い、アウトソーシングが必要なものなども洗い出そうとしているところ。個人ではなく、業務をお願いできるところがあれば委託も考えるし、市の直営にすることも選択肢の一つ。施設が老朽化しているところでもあるので、専門性がなくても火葬業務にあたれるような設備にするといったことも考えられる」と答弁し、いくつかの可能性から最善の対応策を探っていくとした。