陸前高田の輝き 伝えたい、元市長・菅野氏の自分史「想い出の記」広く頒布へ
平成30年6月16日付 7面
今年3月に82歳で亡くなった元陸前高田市長の菅野俊吾氏が昨年出版した記録集「想い出の記」。昭和62年〜平成15年まで4期16年の市長時代の施策を中心に郷土のまちづくりなどを述懐しており、東日本大震災以前の陸前高田の歩みを読む者に伝える。菅野氏は親しい人々に贈ってきたが、出版元の㈲高田活版(佐々木松男代表取締役社長)は広く伝えたいと、このほど有償での一般頒布を決定。アバッセたかた内の伊東文具店で取り扱いが始まった。
まちづくりの歩み記す
菅野氏は昭和10年同市高田町生まれ。東北大学法学部を卒業後、銀行や印刷会社勤務を経て同39年にふるさとに戻り、家業の高田活版所を経営。
54年の県議選で初当選して62年までの2期を務め、同年勇退した熊谷喜一郎市長の後継として市長選に立候補し初当選。平成15年までの4期16年にわたり、同市の豊かな自然環境と歴史・文化を生かした「海浜健康文化都市」づくりを推進してきた。
「想い出の記」は、市長時代や自らの生い立ちをたどる自分史の位置付けで、高田活版の看板を受け継いだ佐々木社長、ともに郷土発展に汗を流した仲間たちの協力のもと、コツコツとつづっていたという。
しかし、「8割方完成したところ」(佐々木社長)で東日本大震災が発生し、高田町にあった菅野氏の自宅や高田活版も被災。原稿や資料の多くを失った。
がれきの中から見つかった資料や写真も用いるなどして、菅野氏の記憶をたどりながら、昨年9月、発刊にこぎ着けた。
巻末の「発刊にあたり」の中で同氏は、「東日本大震災による被災で壊滅した本市が、新たな道筋で再建が進んでいくと同時に、過去の陸前高田市の行政や市民の思いなどが忘れられてしまうのではと懸念する気持ちが湧いてきた。同時に本書が、資料として微力でも陸前高田市の証言としての役割を担うのではという思いが強くなり、私の出版への気力への原動力ともなった」と、〝再チャレンジ〟を決意した経緯を述懐している。
震災時の自らの体験に始まり、「私の履歴」「陸前高田市長として」「思い出、所感、受章など」の3章立て。広田湾埋め立てなどを描いた工業開発型から環境も重視した調和型へのまちづくりの転換、市民と力を合わせた気仙サイクルロードレースや全国太鼓フェスティバルといったイベント開催など、モットーとする「対話の市政」を根底に進めたまちづくりを軸に、数々の出来事を記した。
家族とのスナップ写真や孫たちへのメッセージ、親しく付き合った故人への別れの言葉なども収録されており、温厚な人柄をしのばせる。
発刊当初は菅野氏に近しい人々へ贈ってきたが、佐々木社長は「俊吾さんの思い、そして陸前高田の輝きや歩みをより多くの人に伝えたい」と、印刷した300冊に限って有償で頒布することを決めた。
帯文は、元県立博物館長の金野靜一氏が寄せ、菅野市政の4期16年を「市民と共に手づくりの理想都市を求め華やかに輝いていた時代であった。その神髄は不滅である」とし、「近・現代の陸前高田市の『有識故実』の書」であると表現している。
頒布価格は1800円。アバッセたかた内の伊東文具店で取り扱っている。問い合わせは同店(℡53・2210)まで。






