「関係人口」もっと創出を、総務省のモデル事業団体に採択/住田町

▲ 町外在住者の参加が増えている「水しぎ」。こうした伝統行事などを生かし、関係人口のさらなる創出・拡大を見据える=世田米

 住田町は本年度、総務省の「『関係人口』創出事業」モデル事業団体に採択された。地域の住民や課題解決にかかわる人々を増やし、継続的なつながりを持つ機会を提供する取り組みに、財源補助が受けられるもの。同様の取り組みでは、同町の一般社団法人SUMICA(村上健也代表)が実施する事業も、一般財団法人地域活性化センターによる本年度の「移住・定住・交流推進支援事業」に選ばれた。多彩な切り口から地域活性化や伝統文化継承にかかわる人材を掘り起こす取り組みとして、今後の成果が注目される。

 

 地域活性化の担い手に


 近年、移住者らによる「定住人口」や、観光で訪れた「交流人口」に当てはまらない「関係人口」への注目度が高まっている。地方では、人口減少や高齢化の進行で地域づくりの担い手不足に直面。一方で、地域外の人材が入り込み、新たな活性化を生み出す動きも広がっている。
 こうした中、総務省では、各地方自治体が実施する地域と持続的なつながりを持つ機会・きっかけを提供する取り組みをモデル事業として採択。公募を経て、本年度は全国で約30団体が選ばれた。
 住田町では、これまでに構築した人的ネットワークや文化・自然資源を生かし、地域と持続的につながる関係性の創出を目指す。採択を受け、本年度一般会計補正予算に事業委託金として378万円を盛り込んだ。
 町は昨年、ふるさと住田会の役員に加え、復興支援でかかわりが強い首都圏在住者、林野庁からの派遣で町での勤務経験がある職員ら約60人を「すみた大好き大使」に委嘱。大使らのつながりを生かした人材の呼び込みや交流活動に力を入れる。
 地域づくりに関連したインターン活動で住田や気仙を訪れたことがある大学生らを対象に、地域課題を話し合う場も設ける方針。さらに8月からは「すみた現地ツアー」を随時開催する。
 東日本大震災の復旧・復興に向けた動きの中で構築されたネットワークも活用。木造仮設住宅支援などで連携してきた各種団体とのつながりを生かし、町関係者らが東京や愛知などに出向きながら、住田に関心がある人材のマッチングを図る。
 町はさらに「移住・定住・交流つながり希望者向けガイドブック」も作成する方針。「人・暮らし」にポイントをしぼり、住田に住む魅力や生きがいなどを発信することにしている。
 総務省の採択事業とは別に、地域活性化センターの「移住・定住・交流推進支援事業」に、SUMICAが取り組む「すみたループ事業」が採択された。支援事業は、市町村振興宝くじの収益金を財源としており、各種活動に対して補助を受けることができる。
 SUMICAも、将来的な移住・定住者や関係人口増を見据える。今後は▽地域おこし先進地の視察や人的ネットワークの構築▽住田の良さを発信する首都圏でのイベント開催▽地方での暮らしの良さを発見・発掘する勉強会開催──などを計画している。
 県内の各市町村では、田舎暮らしを望む人々を取り込んで人口増につなげようと、空き家を生かした移住・定住の取り組みに力を入れている。半面、職場や家族の関係などで移住は難しいながらも、地域に愛着を持ち続ける都市部在住者も少なくない。こうした層が定期的に訪れやすい環境づくりも求められている。
 町内では近年、世田米で約200年前から伝わり、1月に行われる火伏せの奇習「水しぎ」に、県外在住者が参加。担い手不足を補うだけでなく、住民との交流拡大や文化発信にもつながっている。町ではこうした伝統行事も生かしながら、さらなる関係人口の創出・拡大を図ることにしている。