港湾事業などで考えただす、5議員が登壇して論戦/大船渡市議会6月定例会一般質問

▲ 5議員が登壇して当局の考えをただした一般質問2日目=大船渡市議会

 大船渡市議会6月定例会は21日、前日に続いて通告に基づく一般質問を行った。千葉盛、小松龍一、渕上清、伊藤力也(いずれも光政会)、東堅市(新政同友会)の5議員が登壇。それぞれ大船渡港湾事業や子育て支援、交流人口拡大に向けた地域間連携などの課題を取り上げ、市当局の考えや今後の対応をただした。

 大船渡港湾事業に関する質問を行ったのは、伊藤議員。市当局に対し、大船渡港の物流貨物量、コンテナ貨物量の現状と今後の対応などを尋ねた。
 同港の貨物取扱量は、震災前の平成22年が267万㌧で、23年は65万㌧。その後は増加に転じ、26年には263万㌧と震災前の水準に回復。27年は247万㌧、28年は229万㌧と若干減少したが、29年は増加の見込みという。コンテナ貨物量(実入り)は、22年が1760TEUだったが、29年は1860TEUと過去最高の取扱量となった。
 鈴木昭浩商工港湾部長は、「国際フィーダーコンテナ定期航路は、京浜港から東南アジア、欧州、アメリカなど、世界各国と通じていることが挙げられ、新たな荷主獲得にもつながっている」などと、コンテナ貨物の取扱量増加の要因を説明。「官民一体の取り組みを一層強化し、港湾を核とした産業の振興や、地域経済の活性化に努めていきたい」と答えた。
 同議員は、北上山地へのILC(国際リニアコライダー)誘致に関し、政府判断が待たれる中での当局の姿勢も追及。新沼徹企画調整課長は「国は正式にいつ判断するかは言っていないが、市としては今年中には何らかの意思表示があると前提し、対応できることを明示できるようにしておきたい。ILCにかかるまちづくりビジョンと、港湾の活用プランの策定を鋭意推進している」と述べた。
 千葉議員は妊婦健診や出産に関わる費用の助成拡大について取り上げ、「妊婦健診の助成や出産育児一時金の制度があるにもかかわらず、妊娠して出産するまでに多額の費用がかかる現状がある」として、市当局の見解をただした。
 後藤俊一生活福祉部長は「妊婦健康診査については、委託契約した県内および気仙沼市内の医療機関で、当市が発行した受診票により、健康診査14回、子宮頸がん検診1回を受診できるものであり、それ以外の医療機関で受診する場合は、受診後に費用を助成している」とし、「これまでも妊婦健診の公費負担拡大を図ってきたが、自己負担のさらなる軽減について検討していきたい」と述べた。
 渕上議員は大船渡線BRTについて、同市からJR東日本への要望事項に対して回答のあった「交流人口拡大」「産業や観光振興による地域活性化」に向けた取り組みと成果を質問。
 鈴木商工港湾部長は、イベント時の臨時運行や沿線の商業施設、観光スポットを掲載したパンフレット発行など、交流人口拡大や産業・観光振興に向けたJR東日本の取り組みを挙げたうえで、「さらなる利便性向上に向けて取り組んでいきたい」とした。
 同議員は続けて、交流人口の拡大に向けてはBRTの利用促進が重要であるとの観点から、「観光客がどうやって大船渡に来るのか、どの手段で来ているのかを詳しく調べないと、利用者の向上には結びつかない」と、BRT利用客を分析する必要性を指摘。
 武田英和企業立地港湾課長は「BRT利用客の内訳については、JRとも協議しながら、どのような方法が考えられるかも含めて、今後の課題としてとらえていきたい」と答えた。
 11月の市長選への出馬を正式表明した戸田公明市長に対し、目指す復興やまちの方向性をただしたのは、小松議員と東議員。小松議員は、復興需要で向上した経済規模や市民所得の維持について考えを求めた。
 市長は、市総合計画やまち・ひと・しごと創生総合戦略で策定した仕事づくり、起業・第二創業支援、人材育成などの施策を挙げ、「各関係者と官民一体となって推し進めることが、結果的に市民所得の維持につながるものと考えている」と答弁。
 また、「今後少なくなっていく復興需要の分をどう補強していくかという議論になる。今後とも起業支援や人材育成を行い、被災地の有効活用による企業誘致、大船渡港の利活用などの取り組みを進めていく。また、今の豊かさを維持するためには、生産性の向上は避けて通れない。そのために身の回りの働き方などを見直し、われわれが気がつかない地域の宝・原石を磨いていく。その結果として、震災前より高いところへの軟着陸が実現できると固く信じている」と述べた。
 東議員は、32年度までの復興計画期間が残り3年を切った中で、市長が掲げる〝復興の総仕上げ〟に関し、「何をしなければならないと考えているか」と尋ねた。
 市長は、ほかの被災自治体との連携強化も図る考えにも触れ、「復興の全体像のあり方について検討を行う中で、各種復興事業の効果検証や記録誌の作成、新たな課題に対応する事業なども含めた完了すべき施策の推進に積極的に取り組む。今後においては、計画期間内に完了させることを強く意識しながら、各種事業の取り組みを強化、加速していきたい」と回答した。