サクラマス資源量増へ、気仙川でも放流試験/県内水面水産技術センター

▲ 気仙川水系で初めて行われたサクラマスの試験放流=大股地区

 県内水面水産技術センター(八幡平市、高橋禎所長)は本年度、陸前高田市と住田町を流れる気仙川で、サクラマスの放流試験を行っている。気仙川漁協(小山公喜組合長)が協力し、20日には同町内の2カ所に計1万8000匹を放流。このうち約半数には標識が付けられ、今年10月と来年3月ごろに30匹程度を捕獲し、各種測定を進める。大船渡市を流れる盛川でも、盛川漁協(佐藤由也組合長)の協力を得て平成28年度から行われており、関係者は川と海双方の活性化につながるサクラマスの資源増に期待を寄せる。

 

川、海双方の活性化見据え

 

6㌢前後に育ったサクラマスの稚魚=同

 サクラマスは生まれてから約1年は河川内にすみ、その後オホーツク海などで2~3年過ごすとされる。春から夏にかけて県沿岸域にまとまって来遊し、秋には育った河川に回帰する。
 河川などの内水面では遊漁、漁獲対象種になっており、海では定置網などで水揚げされる。県内の内水面では平成3、4年には18㌧の水揚げ量を誇っていたが、17年以降は10㌧以下の低水準が続く。県沿岸での水揚げ量は60~100㌧で推移している。
 希少性が高く、味にも定評があることから高単価で取り引きされる。さらに定置網の漁獲量が少ない春に漁獲され、漁協自営定置網にとっても貴重な収入源となっている。
 遊漁料などが主な収入となっている内水面の各漁協でも、さまざまな魚種の資源量増加が急務。サクラマスの資源造成は内水面、海面漁協双方にメリットが生じる。また、河川放流種苗はヤマメが多くなっているが、サクラマスに代替していきたい狙いもある。
 同センターによると、これまで50万匹の稚魚生産に向けて技術開発を進めてきた。27年度実績は16万匹で、28、29年度はそれぞれ25万匹にまで増えた。
 28年度以降、盛川を含む県内3カ所で放流試験を実施。稚魚生産の実績増をなどを受け、本年度から気仙川を含む6カ所を新たに追加し、県内9河川で行う。
 気仙川流域では、20日に住田町の大股地区(大股川)と上有住地区(坂本川)で試験放流が行われ、6㌢前後まで育った稚魚を放した。作業に立ち会った漁協関係者は、順調な成長に期待を込めた。
 同センターの大野宣和上席専門研究員(53)は「川での遊漁に加え、大きな魚体が産卵する光景も多く見られることで、観光面などの地域振興にもつながれば。気仙川では、ある程度は天然物も戻っていると思うが、技術開発によって少しずつ各地区に稚魚を出せるようになってきた」と語る。
 気仙川河口部は東日本大震災で甚大な被害を受けたが、河川復旧工事は佳境に入った。一方、大股川を含む上・中流域では、津付ダム事業の中止に伴う河川改修を中心とした治水対策事業が各地で展開されている。
 護岸工事をはじめ防災充実に向けた事業が着々と進む中、気仙川漁協では「増殖事業は、長い目で取り組まなければならない。川釣りの活性化はもちろんだが、多種多様な魚が生息しやすいよう『すみか』となる河川環境を守る意識も高まってほしい」としている。