住民主体の地域づくりへ、小田切教授(明治大)招き講演会/大船渡市(別写真あり)

▲ 小田切氏(右端)を講師に迎えて開かれた地域づくり講演会=リアスホール

 大船渡市による「地域づくり講演会」は24日、盛町のリアスホールで開かれた。全国各地で取り組まれる住民主体の地域づくりに理解を深めようと、市と震災復興に関する協定を結ぶ明治大学が連携して開催。農山村再生論を専門とする同大学農学部専任教授の小田切徳美氏が講演を行い、市民らは住民による地域づくりの手法や都市部住民との交流による活性化策などを学んだ。

 

市民らが手法など学ぶ

 

 同市と明治大は、東日本大震災後の平成24年に協定を締結。同大学では市に対して復興事業をはじめ、地域活性化に向けた取り組みなどにも協力している。
 現在、国内では少子高齢化や人口減少が進行する一方、地方の魅力を見つめ直した都市部住民の「田園回帰」、関係人口の形成といった新たな動きがみられる。こうした中、市は将来的にも持続する地域にしていくために、住民自らが主体となる地域づくりの先進的な事例を学ぼうと今回の講演会を企画した。
 市内地区公民館、地域公民館の館長らを対象とした研修会も兼ねて開催し、市民ら約120人が参加。冒頭、戸田公明市長は「市では少子高齢化、人口減少に直面から向きあい、持続可能な市民協働のまちづくりを模索している。講演が地域活動を進めるうえでの参考となれば」とあいさつした。
 小田切氏は、「地域再生の道─全国の『地域づくり』事例より─」と題して講演。1960年代から人、土地(利用)、ムラの順で段階的な空洞化が進んできた中、各地で農山村再生に向けた地域づくりが行われるようになったとした。
 そこで、自らが全国の地域運営組織による取り組み事例をもとにまとめた、地域づくりの枠組みを提示。「再生の3要素」として、①暮らしのものさしづくり②暮らしの仕組みづくり③カネとその循環づくり──を挙げた。
 このうち、①については「『暮らしのものさしづくり』は、まさに戦後直後から公民館活動としてやってきたことではないか」と述べ、郷土教育を原点とした地域愛や誇り、人材といった「主体(主役)」をつくることと説明。②はコミュニティーといった「場(舞台)」を、③はさまざまな経済的な活動、仕事といった「条件(シナリオ)」をつくることとした。
 そのうえで、「農山村再生を舞台になぞっていえば、主役があって舞台があって、持続するシナリオがある。こういったものが組み合わされることによって、農山村の再生という取り組みが西日本から押し寄せてきた」と述べ、国による地方創生との共通点も示した。
 各地の地域運営組織による事例も紹介。地域の小学校を守るために住宅会社を立ち上げて住宅の建設や空き家改修に取り組み、移住促進を図った広島県三次市青河自治振興会などの取り組みを挙げた。
 また、農山漁村に対し、都市に住む若者やファミリー層の定住願望が高いなどの「田園回帰」の傾向がみられることや、都市部住民が地域や住民と多様な形でかかわりを持つ「関係人口」の形成が活発化している新たな動きにも言及。魅力ある地域づくりが人を呼び込み、そこで移住・かかわりを持った人々が活動を刺激し、サポートするという好循環が生まれている地域も出ているとした。
 最後に、「地域運営組織が活発なところと、公民館運動が活発なところは、ほぼ重なる。公民館を母体とした地域運営組織づくりには大きなメリットがある。時間をかけていいものをつくり、外からも内側からも若者がこぞって来るような、にぎやかな過疎地域をつくってほしい」と呼びかけた。
 参加者らは、事例も参考にしながら熱心に聴講。質問も行い、今後の地域づくりに生かそうと誓い合った。