20年の植樹活動に光、若萌の会会長代行の片山さんに農水大臣から感謝状/大船渡

▲ 農水大臣感謝状を贈られた片山さん(前列㊨)と若萌の会の元役員たち=三陸町越喜来

 昨年4月に解散した大船渡市三陸町の植樹グループ「若萌の会」の会長代行を務めていた片山和一良さん(66)=同町越喜来=が平成29年度緑化功労者・農林水産大臣感謝状を受賞し、このほど福島県で行われた第69回全国植樹祭で表彰された。同会の20年にわたる植樹活動が評価されたもの。昨年10月の東北・北海道地区緑化功労者表彰に続く受賞で、若萌の会の元メンバーらも喜びを新たにしている。

 

緑化功労者として受賞

 

 緑化功労者は、国土緑化運動に長年にわたって貢献し、その功績が顕著な人を表彰するもの。都道府県知事や国土緑化推進機構理事長による推薦を受けた候補者を中央表彰委員会が選考し、農水大臣、同機構会長、林野庁長官、同機構理事長名のいずれかの感謝状が贈られる。
 若萌の会は、夏虫山の裸地化や、それに伴う下流の越喜来湾での漁業への影響を憂慮した住民らが、平成9年に地元の三陸公民館で開かれた気仙沼市のカキ養殖漁家・畠山重篤さんの講演会をきっかけに結成。
 生活用水の水源地となっている浦浜川源流の夏虫山にある養鹿場跡地約3㌶の緑化を目指し、会長に就任した故・前田武さんを中心に、10年から毎年4月29日の『みどりの日』(現『昭和の日』)に合わせて植樹活動を実施。植樹したものは1本ずつ金網で囲ってシカの食害から守るなどの活動も展開した。
 東日本大震災が発生した23年は、肥の田地内に会場を変え、海が見える場所に震災犠牲者の追悼や復興の祈りを込めたオオヤマザクラの苗木を植えた。
 同年5月に、会長を務めていた前田さんが死去。事務局長を務めていた片山さんがその遺志を引き継ぎ、会長代行に就任した。
 大震災以降は地域環境が大きく変化したことから、規模を縮小しながら活動を継続してきたが、植樹を行ってきた夏虫山中腹では順調に苗木が育ち、自力で成長できるようになったことから、昨年の植樹会を最後に20年の歴史に幕を下ろした。
 20年間で植樹してきた苗木は、モミジ、ミズナラ、ブナなどの約5000本。植樹会には合計で延べ900人ほどが参加した。現在、結成当初に植樹したものは3㍍ほどにまで成長しているなど、夏虫山は広葉樹、針葉樹とも樹勢を回復しつつあるという。解散後も同会の元メンバーらが管理を続けている。
 全国植樹祭での表彰式には、妻の月江さん(64)と出席。その前夜祭では天皇・皇后両陛下もご出席なさり、受賞者にお声をかけられた。天皇陛下が、片山さんに植栽した木がどのような状態になっているかをお聞きになられ、片山さんは現在の状況を説明したという。
 片山さんは昨年、東北・北海道緑化功労者表彰も授与されており、それに続く名誉に同会元メンバーらも喜びを新たにしている。
 副会長を務めていた坂本昭陽さん(75)は「植樹を始めた当時は、シカが皮をはいで食べていたので、木は立ち枯れしていた。水をきれいにするには雑木が必要なので、いろいろな木を植えて、シカを追い出すような工夫をした」と当時を振り返る。
 事務局を務めていた佐川静香さん(56)は「最初は本当にはげ山。それが植樹を始めてからは、それ以外の場所でも木が生えてきていた。毎年参加する中で、自然の回復力を実感できた」という。
 片山さんは「水源地にこだわって植樹したが、今の夏虫山は、20年前には想像もできないところまで回復した。(農水大臣感謝状は)ただ驚くばかりだが、その功績は会のもの。自分たちのことながら『ここまでよくやったな』という気持ち」と笑顔で話していた。