32年にわたる歴史に幕、三陸大船渡さんままつり実行委が解散
平成30年6月29日付 1面

大船渡市内の水産や観光等の関係機関で構成する「三陸大船渡さんままつり」実行委員会(会長・新沼哲大船渡水産物商業協同組合理事長、19団体)は28日、大船渡町の防災観光交流センターで本年度の総会を開いて実行委の解散を決め、32年にわたるまつりの歴史に終止符を打った。「日本一のさんままつり」を目指す機運が高まる中、現体制では事業費や人材確保などに限界があるとして、実行委の発展的な解散を決断した。今後は、赤崎町の未来蛸ノ浦実行委員会の「初さんまうにアワビ帆立かきホヤわかめ祭」に協力し、日本一の実現に向けた盛り上げを図っていく。
三陸大船渡さんままつりは、市の基幹産業である水産業の一層の振興を図り、地場水産物等の販路拡大と観光誘客促進などの地域活性化に寄与しようと、昭和61年にスタート。大船渡港で水揚げされた新鮮なサンマの炭火焼き提供を目玉に、市内外から多くの観光客を呼び込み、秋の恒例イベントとして定着した。
東日本大震災が発生した平成23年度は休止を余儀なくされたが、そのほかは毎年開催。昨年度まで通算31回実施している。
28年度には、市内で官民連携による「さかなグルメのまち大船渡」の実現に向け、サンマをテーマにしたまちづくりが本格化。この活動で「日本一のさんままつり」も目指す中、同年の第30回まつりでは1260匹のサンマを1列に並べるギネス世界記録を達成し、多くの注目を集めた。
一方、昨年度は9月中旬の開催を予定したものの、台風やサンマの不漁を受け延期に。10月の産業まつりに合わせ、内容も縮小しての実施となった。
「日本一のさんままつり」を目指す機運が高まる中、市内では赤崎町の未来蛸ノ浦実行委が毎年8月下旬に初水揚げのサンマを振る舞う「初さんまうにアワビ帆立かきホヤわかめ祭」を開催し、高い人気を集める。また、サンマ漁のシーズン中は東京で「三陸・大船渡東京タワーさんままつり」が開かれ、震災後は復興支援として大船渡のサンマ炭火焼きを提供する全国各地での「さんままつり」も増えた。
こうした動きの中、三陸大船渡さんままつり実行委が「日本一のさんままつり」を実現するには、財源や運営にあたる人材確保に限界が生じてきた。こうした現状を見据え、昨年度から実行委の今後の方向性が検討され、この日の総会で協議することとなった。
総会には、委員や事務局など11人が出席。新沼会長(60)はこれまでのまつりの歴史を振り返り、「総会では日本一のさんままつりを目指すうえで、実行委がどう進むかを協議する。忌憚(きたん)のない意見をお願いしたい」とあいさつした。
協議では29年度の事業と収支決算を報告し、原案通り承認。続いて、実行委の今後の方向性についての議案を話し合った。
この中では、事務局側が「『日本一のさんままつり』を目指そうという意欲とは裏腹に、日本一を目指すには、市をはじめとする『三陸大船渡さんままつり』の構成団体等が一致協力して、対岸で実施している『さんままつり』に協力することの方が、スタッフ、予算、内容の各面を考慮した場合、理にかなっている」と説明。
市観光物産協会やさかなグルメのまち大船渡実行委が取り組む、年間を通じたサンマに関する事業を進めながら「日本一を目指したい」とし、「実行委は発展的に未来蛸ノ浦実行委員会に協力することとし、解散する」と提案した。
出席者からは「実行委はなくなるということか」「未来蛸ノ浦実行委への具体的な協力はどのようなものか」などと質問。協力体制に関し、事務局は「これまでも行っていたが、今後は全面的に協力し、役割分担をしてイベントを盛り上げていきたい」との考えを示した。
出席者から反対の声はなく、実行委の解散を決定。「三陸大船渡さんままつり」は昨年度の第31回をもって終了し、今後は未来蛸ノ浦実行委のイベントに協力していくことを申し合わせた。
また、余剰金43万2312円の処理も協議。市からの提案もあり、余剰金のうち昨年度のまつりによるサンマ売上金と出店手数料の24万4100円は実行委事務局を務めてきた観光物産協会へ納入し、残る18万8212円を市へ返納することを決めた。
会議終了後、出席者からは「(解散は)もったいないような気もするな」との声も。新沼会長は「日本一を目指すならば、蛸ノ浦と組んでもっと大きなまつりにした方が、お客さんにも喜んでもらえるだろう。今後も協力して盛り上げていけば、さんまのまち・大船渡のPRになる。市民が誇りを持って大船渡をPRする体制づくりを図ってほしい」と話していた。