解体して越喜来に移築、ニュー清水の仮設店舗/大船渡
平成30年7月5日付 7面

昨年2月まで、大船渡市大船渡町で営業していた「理容室ニュー清水」(清水康男代表)の仮設店舗が、三陸町の㈲片山建設社長・片山和一良さん(66)に譲られ、現在、同町越喜来字沖田地内へ移築する工事が進められている。東日本大震災の発生から1カ月余りで建設され、千葉県の画家らの手によってカラフルに彩られた建物は、理容室としてだけでなく、国内外から訪れた人たちの憩いの場として、多くの絆を紡いできた。解体・移築工事は、電気・設備関係を残すのみとなっており、まもなく越喜来の住民らが集うコミュニティーの場として生まれ変わる。
絆紡いだ憩いの場 再生へ
片山さん(建設会社社長)が譲り受ける
震災前、大船渡町台地内の県道沿いにあったニュー清水は、大津波で店舗が全壊。清水代表(71)の自宅も被災したが、震災発生から約1カ月半後の4月26日に同地内の高台にプレハブの仮設店舗を再建した。
「はじめはどこにでもあるような殺風景なプレハブだった」(清水代表)が、被災地で支援活動に携わる千葉県在住の画家・ミヤザキケンスケさんが清水代表と知り合ったことをきっかけに、店舗の壁や屋根にペイントを施すことに。作業には、気仙両市などで活動を展開していたオール・ハンズ・ボランティアズのメンバーなど、多くの人が協力した。
「ハンド・イン・ハンド(手に手を取って)」をテーマにしたイラストは、空を飛ぶフェニックスから贈られたプレゼントを人々が渡し合う姿や、満開の花などが明るい色調で描かれた。
遠くからも目立つ色鮮やかな店舗には、いつしか国内外から訪れた人々が集うようになり、多くの絆を紡ぐ憩いの場となっていった。
復興のつち音が響く中、仮設店舗での営業を続けてきたが、29年3月に大船渡町永沢地内で本設店舗がオープンすることとなり、同年2月に惜しまれながら約6年にわたる歴史に幕を下ろした。
その後、「(仮設店舗を)残せるものなら残したい。上手に解体して、必ず再建してくれるところはないか」と考えていた清水代表のもとには、店舗を譲ってほしいという話がいくつか持ちかけられた。清水代表は、その中の一人の片山さんの話を聞き、「(片山さんに)越喜来をアートのまちにしたいという熱い思いがあった。『この人なら』と思い、譲ることにした」という。
店舗の解体・移築は片山建設が担当し、今月3日までに造作関係の工事が終了。電気・設備工事は残しているが、片山さんによると「スペースとしては既に使える状態」という。
仮設店舗の用途はまだ決まっていないが、片山さんは「例えば、住民などが日替わりでカフェをやったりして、越喜来の人たちが集うようなコミュニティーの場になってほしい」と願う。
清水代表は、「片山さんに、仮設店舗を上手に再建してもらえてうれしい。(仮設店舗で)たくさんの人と交流していく中で、生きていること自体が復興なのだと分かった。震災直後からまちの復興を見てきた建物。越喜来には、まだ復興途上のところもあるだろうから、今度はそれを見守ってほしい」と感慨深そうに話していた。