32年春のオープンを計画、市民文化会館着工/陸前高田(別写真あり)

▲ (仮称)市民文化会館の建設地㊨と中庭のイメージ図=高田町

 陸前高田市の(仮称)市民文化会館(以下:市民文化会館)新築工事安全祈願祭は5日、高田町のかさ上げ地に形成された中心市街地内の現地で行われた。600人以上を収容できるホールをはじめ、野外イベントが可能なスペースを整備する計画で、平成32年春のオープンを予定。芸術・文化、生涯学習活動の拠点になるとともに、市内外の人々の出会いと交流を広げる場として活用が見込まれる。建設地は大型商業施設アバッセたかた、今秋供用開始を予定する「交通広場」に近く、施設設計には町並みとの連続性も意識。周辺施設との相乗効果によるにぎわい創出の面でも大きな役割を担うことが期待される。

 

芸術振興の重要拠点に、現地で工事安全祈願祭/高田町の中心市街地に整備

 

 安全祈願祭には市と市教委、市議会、設計監理者であるNTTファシリティーズ/関・空間設計共同体と、施工にあたる佐武建設の関係者らが出席。
 直会で戸羽太市長は「陸前高田市は震災前から、文化・教育・芸術に重きを置いてきたまち。ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくりを目指す中にあって、障害者や高齢者も利用しやすい施設に、という意もくんでいただき、完成が待ち望まれる」とあいさつし、無事故と早期完成を願った。
 市民文化会館は、東日本大震災で被災した中央公民館と市民会館の「災害復旧」に当たる施設。640人がゆったり座れる大ホールのほか、実習室や和室、多目的室、防音設備が整った練習室などが設けられ、コンサート、演劇、踊りなどの舞台、バンド練習、展覧会などに幅広く利用できる。
 敷地面積は1万4208平方㍍、延床面積は3743平方㍍。メーンの建物となるホール部門は鉄筋コンクリート造一部鉄骨造3階建てで、実習室などの市民活動部門は木造平屋建てとなる。平屋部分は回廊型になっていて中庭が設けられ、屋外イベントにも対応する。工事請負金額は25億8120万円。
 高田町にあった旧市民会館は大震災発生当時、避難所に指定されており、避難した人たちが大勢亡くなった場所でもある。新施設は旧施設より約400㍍山側(北側)に移転。敷地も以前より12㍍ほどかさ上げされた。津波警報、大津波警報発表時にはさらに高台へ避難することが求められるが、施設完成時には高台に延びる道路2本の整備が完了している。
 施設西側には道路を挟んでアバッセたかた・市立図書館が、南西300㍍ほどの場所にはJR陸前高田駅がある。同駅周辺では現在、交通広場の整備が進む。完成すればBRTだけでなく県交通や乗合タクシーなど公共交通の乗り入れが図られ、車を持たない人が足を運ぶ際にも至便となる。
 また、北側は「七夕ロード」とも呼ばれるメーン通りになり、通りの先には今後「川原川公園」が、道向かいには「イベント広場」が整備される計画。同会館中庭はイベント広場に向かって開いた設計になっており、通りや広場からも諸室での活動が感じられる。
 NTTファシリティーズ東北支店の木津川直樹支店長は、「周辺施設とのつながり、町並みとの連続性を意識した設計で、まちに活気をもたらす効果を狙った。この場所からにぎわいが生まれるよう、総力をあげて取り組みたい」と語った。
 施設完成予定は31年末。現在、高台移転のための整備工事が進められる高田小学校の仮設グラウンドが同施設の敷地に含まれていることから、同校の移転を待って会館駐車場等の工事を始める。また、備品搬入などを行う都合上、オープンは32年3~4月ごろになる予定だ。