市内各地で不戦の祈り、遺族会が忠魂碑巡り初実施/陸前高田(別写真あり)

▲ 市内の慰霊碑を巡る事業を初実施した遺族会。参加者が各地で追悼の祈りをささげた=米崎町

 陸前高田市遺族会(上部修一会長)は8日、戦没者をまつる市内各地の忠魂碑や顕彰碑を巡る慰霊事業を実施した。終戦から73年。遺族の高齢化が深刻さを増す状況を受け、負担が少ない地元での活動をと初めて企画した。戦争の教訓を次世代へとつなぐ「継承」が課題となる中、各地で不戦の誓いと追悼の祈りをささげるとともに、結束を強化する機会とした。

 

会員の高齢化深刻、次世代への継承が課題に


 この慰霊事業は、同会が毎年行っている靖国神社(東京都千代田区)や岩手護国神社(盛岡市)への参拝とは別に、「会員に気軽に参加してもらうため、地元の慰霊碑に改めて光を当てた活動を」と企画した。
 初回の8日は、事業の成果・反省点を探ろうと役員のみを対象とし、16人が参加。震災の復旧工事のため石碑が一時別の場所へ移されている気仙町を除き、市内7町の各1カ所を見て回った。
 各訪問先では花を手向けて手を合わせたあと、担当役員が石碑建立の経緯や費用、英霊の数などを説明した。
 同会竹駒支部の藤巻良一支部長(81)は「地元以外の石碑について知らないことばかりで、悲惨な戦争に思いをはせる意義深いものだった。来年以降も続けていいのでは」と話していた。
 同会の活動を支えている会員は、戦没者の子ども世代がメーンで大半が80代。高齢化を背景に会員が減少し、草取りなど慰霊碑の維持・管理などの負担は年々増し、毎年秋に開催する戦没者追悼式への参加者数も減少傾向にある。
 日本遺族会をはじめ上部組織では、戦没者の孫世代でつくる青年部を結成する動きがあるという。同会も次世代への継承を見据え、青年部の発足を目指している。
 昭和20年、1歳を迎える前に太平洋戦争で父・琢造さん(当時27)を失った上部会長は「英霊の顕彰は時代がかわっても継続していかなければならない。子世代から孫・ひ孫世代へとつないでいく機運も少しずつ高められれば」と戦争の風化防止へ意欲を語った。