巡礼記がコミックに、しまたけひとさん執筆 「てくてく気仙三十三観音参り」

▲ 巡礼のコースや見所がマンガで見やすく整理された「てくてく気仙三十三観音参り」

 昨年3月、気仙三十三観音の徒歩巡礼に参加した東京都在住の漫画家・しまたけひとさんによるマンガ「てくてく気仙三十三観音参り」がこのほど、東海新報社より刊行された。気仙3市町に散らばる霊場を6日間かけて踏破した記録が、東日本大震災による被災と復興の様子、出会う人々の温かさとともに描かれ、改めて7年4カ月前の震災に思いをはせながら〝祈りの道〟への関心を高める内容となっている。

 

徒歩で見た霊場と復興

 

 同書は、震災後、気仙三十三観音霊場の復活と認知拡大などに取り組む「祈りの道」再興プロジェクト(代表・上野成就院 福田亮雄住職)が企画した徒歩巡礼をもとにつづられたコミックエッセイ。平成29年3月25〜30日の6日間、実際に歩いた気仙3市町のコースと、霊場33カ所を87㌻にわたって紹介している。
 しまさんは、四国八十八カ所霊場をお遍路として歩いた体験を「アルキヘンロズカン」として、大震災後の青森から福島までの700㌔にわたる取材をもとに「みちのくにみちつくる」として描いてきた。これらのマンガを福田代表が読んだことから、しまさんに連絡を取り、徒歩巡礼に誘ったという。
 かねて、「漫画をツールとして震災復興の一助となれれば」という思いを持っていたというしまさんは、これを快諾。計90㌔におよぶ道のりを、地元からの参加者とともに歩き切った。
 しまさんは自身に代わる人物として、女子大学生の「トラヤちゃん」を登場させ、彼女の目線でレポートを進める。巡礼自体はハイキングのような雰囲気ながら、随所に震災のつめあとを見つけるトラヤちゃんは、この地域の人たちの思いや復興へ向かう道筋を感じながら歩みを進めていく。
 旅は一番札所から順にめぐるのではなく、歩きやすい最短ルートをたどる。各札所のいわれや御詠歌、まちの見所などが紹介されていることから「巡礼者必携の書」であるが、地元住民にも〝知られざる〟歴史や逸話がちりばめられ、資料としても読み物としても楽しめる。一柱ずつ見事に描き分けられた観音像のイラストも必見だ。
 福田代表は「単なる巡礼記ではなく、霊場ガイドであり、被災地の現状報告でもある。気仙のスイーツ紹介、同行の方々との心温まるやりとりなど、さまざまなことが凝縮された一冊。気仙の方々に手にとっていただき、古里を再発見してもらえれば」と願う。
 同書は陸前高田市の伊東文具店、大船渡市のブックボーイ各店、ブックポートネギシ本店、住田町の吉田書店で販売している。価格は1000円(税込み)。
 また、しまさんがイラストを描いた「気仙三十三観音手ぬぐい」が、1枚648円で陸前高田市観光物産協会で販売されている。