誘致実現へ思い一つに、市がILCセミナー開催/大船渡(別写真あり)

▲ ILCに関する最近の動向やまちづくりへの波及効果などが示されたセミナー=リアスホール

 大船渡市主催の「ILCセミナー」は12日、盛町のリアスホールで開かれた。世界最先端の素粒子研究施設・国際リニアコライダー(ILC)を北上山地に誘致する取り組みが気仙でも活発化する中、この日は岩手県立大学長の鈴木厚人氏らが講演。参加した気仙各地の住民らは、ILCの仕組みや実現によってもたらされる地域への効果などに理解を深め、改めて誘致実現に向けて思いを一つにした。

 

鈴木氏(県立大学長)らが講演

気仙の住民ら550人聴講

 

 ILCは、全長20㌔㍍〜50㌔㍍にわたるトンネル内で、人工的に宇宙誕生(ビッグバン)直後の状態を再現する施設。国内建設地には北上山地が有力視されており、日本政府は本年中にも誘致にかかる判断を行うとみられる。
 セミナーは政府判断を前に、ILC実現に向けた市民意識の醸成と高揚を図ろうと開催。大船渡商工会議所が共催し、県や陸前高田市、住田町、気仙地区議会国際リニアコライダー誘致推進議員連盟などが後援した。
 この日は、気仙各地から約550人が参加。冒頭、戸田公明市長は「ILCの誘致は正念場であり、国民的な盛り上がりが必要。機運を盛り上げ、政府に決断をしてほしい」と、大船渡商工会議所の齊藤俊明会頭も「ILC実現にあたっては、気仙地域の多くの人たちに大きな夢と希望を与えることができる。力添えを切にお願いしたい」とあいさつした。
 講演は2部構成で行われ、前半は岩手県立大学長で東北ILC推進協議会東北ILC準備室長を務める鈴木氏が登壇。「ILC計画の概要と最近の動向」と題し、ILCの目的や国内外の動向、実現に向けて取り組むべき活動などを語った。
 鈴木氏は物質を構成する仕組みに触れながら、現在、宇宙の96%についてはいまだ解明されていない状態にあると言及。未解明のうち、23%は暗黒物質、73%は暗黒エネルギーであるとして、「ILCによって暗黒物質、暗黒エネルギーの正体を解明し、宇宙に存在する物質の全体像と宇宙の新次元を明らかにすることが、宇宙誕生・進化の解明につながる」と述べた。
 また、日本創生会議において、ILCを契機とする〝地域開国〟が提言されているとして、ILCを通じて各国の研究機関が集結するグローバル科学圏の構築、現在のまちの姿を最大限活用した居住圏の形成、世界各国の研究者が集まることを踏まえ、外国人という障壁をなくすバリアフリー社会の実現などを提案。誘致実現における内陸・港湾施設の活用、自然エネルギーを生かした「グリーンILC」の取り組みにも触れた。
 最後に、「すでに政府が誘致を判断するカウントダウンの段階にある」として、「ILCは先端技術の集大成。オールジャパン、政・産・学・官に加え、民の力も大事。一体になってILCを誘致しよう」と呼びかけた。
 第2部では、県企画理事の大平尚氏が「ILCとまちづくり・産業振興」と題して講演。今春、東北ILC準備室マスタープラン専門部会が公表した「ILC東北マスタープラン」に基づき、ILCとまちづくりのかかわりなどを解説した。
 この中では、ILCによって港湾利用や木材の活用、加速器関連産業への参入といった気仙の産業振興への可能性が広がることなどを示し、「ILC誘致が決まったら、〝こういうことがやりたい〟と地域から提案していくことが大事になる」と語った。
 参加者らは講師らへ質問も行い、ILCと地域とのかかわりを理解。誘致実現に向け、それぞれが一層機運を高めていこうと誓い合った。