新システム どう生かす、森林経営管理制度で意見交換 /住田・林業従事者と町議
平成30年7月22日付 1面
今通常国会で関連法案が可決された森林経営管理制度の認識共有を図ろうと、住田町議会産業経済常任委員会(菅野浩正委員長、委員5人)は20日夜、町内林業従事者との意見交換会を世田米の松嶋家で開催した。所有者が放置状態にしている森林などを自治体や業者が管理を担うことで有効活用を図る新システムで、林野庁から派遣されている町林政課職員が新制度の見通しを説明。出席者からは「山の施業を担う人材確保が重要」などの意見が寄せられた。
意見交換会は「森林・林業のまち」を掲げる住田町の中で、早い段階から新制度の活用策を考えていこうと開催。委員会を構成する議員に加え、気仙地方森林組合住田青年部や住田素材生産業協同組合の各関係者ら約20人が出席した。
菅野委員長のあいさつに続き、林野庁から派遣されている町林政課の横江美幸副主幹が、同庁が示している森林経営管理制度の方向性について解説した。
新制度では、森林所有者に適切な経営管理を促すための責務を明確化。経営管理できない場合は、市町村が委託を受け、意欲と能力がある林業経営者に再委託する。林業経営が難しい人工林は、スギと広葉樹が交じり合った森林に誘導するなど、管理コストの低減を図るとしている。
全国的な森林経営管理の現状をみると、私有人工林ですでに集積・集約化が図られているのは約3分の1。残りの3分の2に対し、新制度で利活用を図る。近年増加が課題となっている所有者不明の森林に対しても「みなし同意」による経営管理権設定ができる。
森林所有者にとっては長期的に安心して管理を任せることができ、意欲と能力がある林業経営者が入ることで収益確保も期待される。地域の林業経営者側では、多数の所有者とまとまった契約が可能になり、経営規模や雇用の安定につながる。間伐などの施業や路網準備の効率化にも寄与するとしている。
新制度下では、まず森林所有者の意向調査から行う方針。すべての意向把握には20年程度が見込まれ、調査に入りやすい地域からの着手が予想されるという。法律施行や制度運用は新年度からとなり、横江副主幹は「本年度は、町としてどうしていくのか、検討をしている状況」と説明した。
説明を聞いた林業関係者の一人は「結局、人を確保するのがいちばんでは。制度や予算があっても、働く人がいなければ始まらない。植え付けや地ごしらえ、下刈りなど、そういった作業の人材確保を」と述べた。
また「素材生産業者とすれば、仕事の取り方が変わってくる。小規模業者は、仕事がとれなくなるのでは」との懸念も。「個人所有だけでなく、地域の共有林もある。収益が見込めず手放したいと考え、寄付の相談が多く寄せられる中で、そういった対応がスムーズに進められるか」といった指摘もあった。