木工2事業体の融資金回収、業績改善も協議長期化/住田町

▲ 木工団地内に立地する三陸木材高次加工協同組合=世田米

 住田町が三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)の融資残額や町有林原木未納額計10億円超の支払いを求め、両事業体や連帯保証人を相手に調停手続きを進める議案が町議会で議決されてから、1年が経過した。これまで5回以上にわたり調停の場が設けられてきたが、和解には至っていない。事業体では単年度黒字を計上するなど経営改善策の成果が表れているが、住民レベルでは公金融資回収の行方が見えにくく、町が目指す経営再建加速化への道筋は予断を許さない状況が続いている。

 

調停申立て議決から1年、経営再建 加速なるか

 

 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町に償還する計画だった。しかし、支払期日を迎えても、定められた額の償還ができない状況が続いていた。
 調停とは裁判所の調停委員が間に入り、協議によって適正・妥当な解決を図る制度。双方が納得がいく解決を目指し、和解・合意すると裁判判決と同じ効果がある。協議の行方によっては、債権を圧縮する内容での和解案も想定されるほか、不成立の場合もある。
 調停を巡る関連議案は、神田謙一町長就任前の昨年7月11日に開かれた臨時議会に提案され、賛成多数で可決。これを受け、町は同11月下旬に大船渡簡易裁判所に調停を申し立てた。
 議決段階での請求予定額は、町の融資分と町有立木の未払代金など10億7741万円。当初、申し立ての相手は両事業体と連帯保証人の25個人・団体だったが、保証人死去に伴う相続放棄などを受け、計16個人・団体を対象に進めてきた。
 町は町議会6月定例会での一般質問答弁で、今年1~5月に計5回の調停があったと説明。先月さらに、もう1回行われたという。町側は早期に和解したい姿勢を示してきたが、議会議決から1年を迎えた今月の段階でも結論には至っていない。
 調停手続きは非公開で進められ、住民レベルでは協議の行方は見えにくいまま推移。議会の一般質問で取り上げられてはきたが、当局は「守秘義務がある」とし、詳細が語られることはなかった。
 今月23日、町は顧問会議と議会全員協議会の場で、調停に関する動きを説明。いずれも非公開で、町側がこれまでの経過や、把握している連帯保証人側の動きなどを示したうえで、今後の方向性を巡り意見交換を行ったとみられる。
 終了後、神田町長は「調停の結論がまとまるのは早いに越したことはない。ただ、当初の目的である事業体存続に向けては、簡単にはいかない面もある。経営陣には、これまで以上に厳しい経営意識で進めてもらいたい」と語った。
 三木は主に、防腐加工などを施した構造用集成材を製造。ランバーは丸太を集成材用ひき板(ラミナ)に製材、乾燥加工している。赤字経営が続いていた27年度から、工場が隣接するけせんプレカット事業協同組合の泉田十太郎専務らの指導のもと、生産性向上や経費削減、歩留まり改善を図ってきた。
 29年度決算をみると、三木の売上高実績は14億4963万円で、2187万円の純利益を出し、4年ぶりの黒字決算となった。ランバーの売上高実績は3億1344万円で、純損失は390万円。売上高は前年度比約5000万円増加したが、設備補修で数週間操業できない状態が続いたことが響き黒字決算には至らなかった。
 この間、資金繰りが厳しい局面はあったものの、金融機関への返済が滞ることはなかったという。三木は本年度、昨年度を上回る純利益を出すペースで事業を続ける。
 泉田専務は「黒字体質にはなってきている。従業員に『自分たちの力で立ち上がるしかない』という意識が出ているのが大きい。その動きを止めない支援が重要」と話す。プレカットとしても、これまで通り事業連携を強めていく方針を掲げる。
 三木の菊池良一代表理事は「生産活動は順調に推移しているととらえている。さらに利益が出るよう進めていく方針だが、そのためにはプレカットからの協力を引き続き得ていくことが何より大事」としている。