「連携協定」生かし対話、津田塾大生が現地活動/住田(別写真あり)

▲ 歴史ある住宅を訪ね、地域の現状を聞き出す学生たち=世田米

 住田町と今年2月に「連携協力に関する包括協定」を結んだ津田塾大学(東京都、髙橋裕子学長)の学生たちが、1日から同町に滞在し、住民らと対話を重ねながら地方の魅力発信について考える連携プロジェクトを展開している。住民や町関係者と膝を交え、高齢化や人口減少がもたらす地域課題や、住民同士のつながりの強さといった魅力を把握。町側では、本年度力を入れている都市住民との交流促進など、協定を生かした活性化に期待を込める。

 

今後の交流促進に期待

 

 津田塾大は、明治33年に私立の女子高等教育機関「女子英学塾」として創立。東京都の小平市と渋谷区にキャンパスがある。
 大学の学芸学部には英文、国際関係、数学、情報科学の各学科、総合政策学部に総合政策学科があり、学生数は約3000人。同学科の森川美絵教授らは平成25年前後から、東日本大震災被災地における医療・福祉・介護連携分野の支援をきっかけに、住田とのかかわりを強めてきた。
 こうしたつながりを地域活性化や大学教育・研究推進につなげようと、協定を締結。相互の資源やネットワークなどを活用し、地域社会の課題解決や人材育成を図るとしている。
 締結後、学生たちが住田を訪れるのは今回が初めて。「地方の魅力の発信」をテーマとし、総合政策学科と英文学科の学生計8人が3泊4日の日程で滞在している。
 1日は役場庁舎内などを見学し、町内で民泊。2日は3グループに分かれ、地域住民らにヒアリングを行った。
 世田米商店街沿いに暮らす泉田是重さん(73)、紀禾さん(71)夫妻のもとには、学生3人が訪問。人口減少や高齢化進行に伴う地域課題、住田の魅力、都市部在住の住民との交流などの現状を聞きとった。
 困り事として話題となったのは、交通手段。泉田さん夫妻は、通院や買い物で苦労している高齢者が多く、緊急時は乗用車を運転できる顔見知りの住民に送迎してもらう〝助け合い〟で乗り切っている現状にふれた。
 また、空き家の増加にも言及。住む人がいないと庭木の手入れや草刈りも進まないといった悪循環を挙げた一方、家財道具や仏壇が残っていることから簡単には貸せない家屋が多いなど、先祖代々から受け継いできた不動産ゆえの複雑さも伝えた。
 このほか、泉田家にある蔵の一つを音楽サークルに利用させ、多彩なイベントが行われている動きも紹介。町外の大学生らによるボランティアでの蔵補修など、課題解決に地域外住民の力を生かしてきた足跡も示した。
 ヒアリングを終えた総合政策学科2年の増田珠美さん(19)=長野県出身=は「住民同士のつながりの強さを改めて感じた。都市部で暮らす人たちが、何らかの縁で住田を知った時に、そのつながりを風化させずに継続・発展できるためには何ができるかを、今後も考えたい」と話していた。
 住田での活動について、森川教授は「学生たちなりに地方創生や地域の魅力をどう発信するかを考えているが、まずは地元の方たちの話をしっかり聞き、交流を深めてほしい」と語る。
 町は本年度、移住・定住しなくても地域へのかかわりを持ち続ける「関係人口」の創出に力を入れている。町は大学との連携活動を通じ、こうした分野への波及も見据える。
 神田謙一町長は「『古里・地元』という認識を持ってもらうことが大事。そうした意識があれば、生活やなりわいにどのような課題があり、何を創造すべきかが見えてくる」と期待を寄せる。