支払額折り合いつかず調停手続打ち切りに、木工2事業体の融資金回収/住田町

▲ 木工団地を形成する三陸木材高次加工協同組合=世田米

 住田町が三陸木材高次加工協同組合(三木)と協同組合さんりくランバー(ランバー)の融資残額や町有林原木未納額計10億円超の支払いを求め、両事業体や連帯保証人を相手に申し立てていた調停手続きが、打ち切りとなったことが9日までに分かった。昨年7月に申し立て手続きを進める議案が町議会で議決され、今年1月以降5回以上にわたり調停の場が設けられてきたが、支払額を巡り折り合いがつかなかったとみられる。


 調停とは裁判所の調停委員が間に入り、協議によって適正・妥当な解決を図る制度。双方が納得がいく解決を目指し、和解・合意すると裁判判決と同じ効果がある。一方、債権を圧縮する内容での和解案や、不成立で手続きが打ち切られることもある。
 複数の関係者によると、8日に大船渡家庭裁判所で調停があり、町や事業体、保証人側に対して裁判所側が手続き打ち切りの旨を告げたという。支払額を巡って双方の歩み寄りが難しく、同意に至らなかったとみられる。
 事業体関係者の一人は「調停は、町としても事業体を存続させるために行った手続き。どうであれ、今後も(工場が隣接する)けせんプレカット事業協同組合などからの協力を得ながら事業を継続し、従業員を守っていきながら収益向上を目指していくしかない」と語る。
 一方、町は「現時点で話せることはない」とし、態度を明らかにしていない。今後、議会などと協議の場を設けるなどしながら、今後の対応策を固めていくとみられる。
 三木は主に、防腐加工などを施した構造用集成材を製造。ランバーは丸太を集成材用ひき板(ラミナ)に製材、乾燥加工している。
 両事業体は、平成19年に経営危機が判明。町から約7億9000万円の公金融資を受けて再建を進め、26年度から年度当たり約3100万円を町に償還する計画だった。しかし、支払期日を迎えても、定められた額の償還ができない状況が続いていた。
 調停を巡る関連議案は、神田謙一町長就任前の昨年7月11日に開かれた臨時議会に提案。町側は「(両事業体は)大きな債務を抱えているままでは、再建のめどが立たない」などとして理解を求め、賛成多数で可決された。これを受け、町は同11月下旬に調停を申し立てた。
 議決段階での請求予定額は、町の融資分と町有立木の未払代金など10億7741万円。当初、申し立ての相手は両事業体と連帯保証人の25個人・団体だったが、保証人死去に伴う相続放棄などを受け、計16個人・団体を対象に進めてきた。
 町はこれまで「守秘義務がある」として調停の詳細を明かしてこなったが、町議会6月定例会での一般質問答弁で、今年1~5月に計5回の調停があったと説明。町側は一日も早い和解・合意を目指してきたものの、議会議決から1年を過ぎてもまとまらない状態が続いていた。