「合同の祈り」開催へ、 東大寺と鶴岡八幡宮が法要・祭事/9月29日に陸前高田で
平成30年8月11日付 1面

物故者慰霊と復興を願い
東日本大震災の発生から11日で7年5カ月を迎える。今月は気仙各地で伝統行事や夏まつりが開催され、新たに整備された市街地やかさ上げ部などでもイベントがにぎやかに繰り広げられた。一方、気仙両市ではいまだ281人が行方不明のままだ。こうした中、東大寺(奈良市)と鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市)は9月29日(土)、陸前高田市で「物故者慰霊と被災地復興への祈り」を合同開催することを決めた。当日は法要・祭事が執り行われるほか、歌手・さだまさしさんが奉納演奏を披露。主催する両寺社は「皆さんと一緒に祈りをささげる場にしたい」とし、来場を呼びかける。
発災から7年5カ月
仏教寺院である東大寺と神社の鶴岡八幡宮は、1180年に焼き討ちにあった同寺再建のため、鎌倉幕府が強力な援助を行ったことをきっかけとし、800年以上にわたって交流が続いている。
東日本大震災後もそれぞれ、宗教・宗派の枠組みを越えた取り組みを行ってきた両寺院は、震災で犠牲となった人々の鎮魂と被災地の早期復興を祈ろうと、平成23年から合同による「祈りの会」を開催。発災の年は鎌倉と奈良の地で、翌年からは会場を交互に移して行ってきた。
被災3県では昨年10月、福島県の郡山女子大で同会が執り行われたのを皮切りに、今年5月には宮城県の瑞巌寺で開催。東大寺の上司永照教学執事は、「鶴岡八幡宮さんとともに『復興がなしとげられるまでこの会を続けていこう』と話してきたが、どちらも被災地からは距離があり、やはり風化していく。その場所を直接目にしなければ、心のこもった祈りにはならないのではないかという危惧があった」と、被災地での開催に切り替えた経緯を説明する。
本県初となる陸前高田での開催は、同寺の森本公穣庶務執事が、中高一貫校である東大寺学園の生徒たちと同市で継続的なボランティア活動を行い、米崎町・普門寺の熊谷光洋住職と懇意にしてきた縁などから実現したという。
会場は、高田町に今春誕生した市総合交流センター・夢アリーナたかたで、午後0時30分に開会。当日は両寺社から、僧侶、神職、伶人(雅楽を奏する人)、巫女ら約40人が来市。東大寺による法要、鶴岡八幡宮による巫女舞といった祭事が合わせて2時間弱執り行われる。
午後2時30分からは、東大寺と縁が深く、東日本大震災の被災地に心を寄せ続けている歌手のさだまさしさんが演奏する。いずれも事前予約不要で、途中入場も可。
戸羽太市長は「日本を代表するような神社とお寺が、発災から7年半もたとうとしている今、祈りをささげてくださるとうかがいありがたい」と両寺社に感謝。「西日本でもひどい災害が起きており、改めて命の大切さや防災を考えなければいけない時期にきている。陸前高田のみならず、近隣の大船渡市や住田町、気仙沼市などからも参加いただき、『祈り』を契機に改めて自分たちの回りの自然災害や防災についても考える機会にしてもらえれば」と話している。
また、普門寺の熊谷住職は「私も昨年、郡山での会に参列させていただいたが、素晴らしい祈りに感動した」としたうえで、「当寺では身元不明者のご遺骨を預かった経緯があり、ご遺族の悲しみを目の当たりにしてきた。悲しみは消えることはないが、この会が皆さんにお力を差し上げ、前へと歩み出す大きなきっかけになるのでは」と語った。
両寺社は、「御霊の安らかなることを願い、謹んでご奉仕させていただく。一人でも多くの方にご参列いただき、失われた命の尊さを思いながら、さだまさしさんの慰霊の歌にも耳を傾けていただきたい」としている。