「関係人口」少しずつ、SUMICAや町が橋渡し役に/住田
平成30年8月12日付 2面
映画制作での交流も
住田町の一般社団法人・SUMICA(村上健也代表)や同町による「関係人口」の創出の取り組みが、少しずつ実を結び始めている。今月5~8日の4日間、都内在住の20代の若者を中心とする映画制作チームが町内に滞在。事前の撮影場所選定や上映会開催など、継続的に行き交う関係が生まれつつあり、関係者はさらなる交流推進に期待を込める。
約30分の短編映画『ある夏のできごと(仮題)』の撮影で東京から訪れたのは、企画プロデューサーで俳優の仁田直人さん(24)と監督・脚本を担う岡部健太さん(22)をはじめ、俳優や撮影・編集担当の計9人。SUMICAが指定管理を担う住民交流拠点施設・まち家世田米駅を拠点とし、町内や陸前高田市で撮影を重ねた。
作品は震災で両親を亡くし、来ては帰ってしまうボランティアに不信感を募らせる地方在住の女性が主人公。姉的な存在であり、信頼を寄せていた女性がボランティアで訪れた男性と結婚して東京で生活すると告げられ、受け入れられずにいる中、出会ったバックパッカーやラジオDJとの交流から心境に変化の兆しが訪れる──というストーリー。
訪れた9人全員が住田で寝泊まりし、議論を重ねて脚本も練り直すなど〝合宿形式〟で撮影。仁田さんは「約3、4時間議論をして、1分間ほどのシーンをつくり上げていった。全員が監督として、また俳優として自分の与えられた役割だけでなく、そういった境界線を越えて作品と向き合い、濃密な時間を過ごすことができた」と語り、充実感をにじませる。
住田での活動は、奈良県出身の仁田さんが東北復興支援ボランティアを通じ、SUMICAのスタッフとつながりを持っていたのがきっかけ。6月下旬に都内で他のスタッフと懇談した時に映画の話が進み、先月中旬には撮影場所を探すため住田を訪れた。
「絵面が良い場所が多く、このまち一つでいろんな作品がつくれると感じた」と仁田さん。その後、急ピッチで脚本や俳優らの調整に入り、3泊4日の住田滞在が実現した。
SUMICAとつながりがあったことで、撮影場所の調整などもスムーズに進んだという。完成後は各種映画祭への出品に加え、町内での上映会も検討し、継続的な交流を見据える。
町は本年度、総務省の「『関係人口』創出事業」モデル事業団体に採択された。SUMICAも、一般財団法人地域活性化センターによる本年度の「移住・定住・交流推進支援事業」に選ばれた。いずれも地域の住民や課題解決・活性化にかかわる人々を増やし、継続的なつながりを持つ機会を提供する流れを目指している。
SUMICAは今後も、首都圏在住の若者たちとの接点を生かして住田に呼び込み、地域活性化につなげる考え。
町でも、都市圏にキャンパスがある大学生との交流・研究活動を後押しするなどして、移住・定住しなくても地域にかかわりを持ち続ける人材育成を進めることにしている。