笑顔乗せて大空へ、広田町で気球チャレンジ/陸前高田(動画、別写真あり)
平成30年8月21日付 7面

陸前高田市広田町のまちづくりに携わるNPO法人SET(三井俊介代表理事)と、栃木県高根沢町を拠点に活動する熱気球クラブ「たかねざわBC」(斎藤幸成代表)は18、19の両日、旧広田中グラウンドで気球を飛ばす挑戦を行った。〝夏の半島〟という悪条件の中でチャレンジする姿を地域住民に見てもらい、希望や夢を持つきっかけにしてほしいと企画。成功率は10~30%とされていたが、2日間とも奇跡的に成功し、気球は地域住民の笑顔を乗せて大空へ浮かび上がった。
夏の半島で奇跡の成功
この挑戦は、SETの学生メンバー・保科光亨さん(20)が発案したもの。SETの教育指導プログラムに参加するため、2年前の夏に初めて広田町を訪れた保科さん。地元の中高生と将来について語り合ううちに、「この子たちのために何かしたい」という思いが強くなった。
参加側から企画側に移り、広田の地でできることを自分なりに探していた時、ふと「この壮大な自然の中に気球が飛んだらどれほどすてきか」と思い立った。たかねざわBCに協力を要請したが、3方向から風が吹き込む半島という地理的な悪条件に加え、夏特有の上昇気流が気球の邪魔をすることから、成功率は低いと一度は断られたという。
しかし、「少しでも成功する確率があるなら挑戦したい。チャレンジすることをみんなで喜び合いたい」という保科さんの熱意に胸を打たれ、挑戦への協力を決定。日光が海水を温めることで風が吹き始めることから、海面の温度が低い早朝に気球を飛ばすことにした。
会場には、2日間で延べ100人以上の住民らが足を運び、チャレンジの行方を見守った。早朝という時間設定、そして高気圧が良い影響を及ぼし、気球は見事に浮上。気球に携わって40年ほどだという同クラブのメンバーは、「だましだまし浮かせたことは何回かあるが、沿岸でこんなに気球が飛んだのは今回で2回目。2日間連続で飛ぶのは初めて見た」と驚く。
気球は来場者を3人ずつ乗せ、10~15㍍ほど上昇。両日とも、来場者全員を乗せ終えるまで安定していたという。
気球に乗った人たちは、「ちょうど津波の高さだね」と震災を振り返ったり、「震災前みたいに堤防を越えて海が見える」と懐かしい景色を共有するなどした。
保科さんは「広田の人が『広田には何もない』と言うのが悲しかったので、町の人や子どもたちに『できっこない』と言われたことに挑戦する姿を見てもらい、気球を夢と希望のシンボルにしてもらいたかった。失敗したり怒られたりしたこともあったけれど、みんな笑顔で気球に乗ってくれたことが一番うれしい」と喜んでいた。
気球チャレンジのあとには、広田小体育館で主に子どもたちを対象としたミニ気球教室も開催。
広田保育園児や広田小児童らが参加し、思い思いの絵を描いたビニールの気球を飛ばした。