初のトレイルランニング大会、自然と歴史文化生かして/住田(別写真あり)

▲ 緑あふれる林道を駆け抜ける選手たち=世田米

 住田町の自然や歴史文化を生かして都市部と地域住民の交流促進につなげようと、初の「すみたつながりトレイルランニングプレ大会」が19日、町内で行われた。散策道や林道に加え、気仙川沿いの蔵並みや商店街も駆け抜ける16㌔がコースとなり、県内外から集まったランナーたちがさわやかな風を浴びながら快走。地元食材による「もてなし」も行われ、関係者は新たな交流創出や地域資源の活用にも手応えを感じながら、継続開催に期待を込めた。

 

今後の交流に手応え

 

 トレイルランニングは、自然に囲まれた中を走るアウトドアスポーツの一つ。上り坂や足場の悪い場所はハイキングのように歩き、緩やかな傾斜や爽快感を感じられる稜線ではペースを上げるなど、ランナーそれぞれのペースで気軽に楽しめる。
 今年3月に町内で仮設住宅住民らのコミュニティー支援活動などを展開する一般社団法人・邑サポートや、同・SUMICA、町地域おこし協力隊、住民有志らで構成する実行委が発足。邑サポートの関係者から、住田でのトレイルランニングを目玉とした新たな交流人口創出の提案があり、昨年から開催を模索していた。
 コース設定や林道の刈り払い、安全確保に向けた関係機関との連携など、細かい準備を経て開催が実現。遠方から訪れた選手たちを歓迎しようと、前日にはまち家世田米駅内のレストラン・kerasse(ケラッセ)で懇親会が開かれた。
 今回はボランティアスタッフを含め、約70人が参加。
 役場前での開会式で実行委の多田欣一会長は「さまざまな大会に出ているみなさんに、コースを検証してもらいたい。住田の良いところを掘り起こし、住田をもっと大好きになってほしい」とあいさつした。
 選手たちはセブンイレブン住田世田米店前の犬頭散策道を出発し、アップダウンが激しい林道を駆け抜けた。山道を抜けたあとの気仙川沿いでは、SUMITAチェーンソーアート杣遊会(そまゆうかい、泉田晴夫会長)が彫刻制作を実演。さらに、冷やした甘酒を給水代わりに配るなど、住田らしさあふれる企画で盛り上げた。
 昭和橋を渡り、古き良きたたずまいが残る蔵並みには休憩所が設けられ、住民がお手製のシソジュースや野菜などをふるまい歓迎。商店街沿いでは地域住民が待ち構え、盛んにエールを送った。
 後半のコースには、急勾配でも知られる天照御祖神社前の石段や気仙大工の技術が光る満蔵寺の山門も。ゴールは町役場で、選手たちは庁舎前に広がる芝生に倒れ込み、達成感にひたった。
 最初にゴールテープを切った富山県富山市の高野征志さん(47)は1時間43分31秒で走破。最終の選手は3時間ほど要したが、安全確保にあたったスタッフを含め、全員が完走した。
 宮城県多賀城市から参加した鈴木邦明さん(50)は「山だけでなく、街並みや寺の良さも味わいながら楽しめたのが良かった。スタッフや住民に温かく迎え入れられている感じがして楽しく、来年も参加したいと思った」と、笑顔を見せた。
 レース終了後は、社協や住田食材研究会の各スタッフらが地元産のトウモロコシ料理や焼き鳥、豚汁、片手で味わえる「五平餅」などを提供。手づくり感あふれるもてなしで疲れを癒やし、ランナーからは「こんなに心温かい企画は初めて」などと好評の声が寄せられた。
 町地域おこし協力隊員の一人で、運営にあたった金野正史さん(31)は「県外の愛好者と地元住民の交流の場をつくることができて良かった。みんな楽しそうに参加してくれたのが何より。規模を拡大しながら、開催を続けられれば」と話していた。