各地のイベントにぎわう、2カ所で震災後初の海開き/気仙の夏決算

▲ 市内外から約1200人が参加しての道中踊りなどが行われた「三陸・大船渡夏まつり」=大船渡市魚市場

 東日本大震災の発生から8度目の夏を迎えた今年の気仙地方は、大船渡、陸前高田の両市でそれぞれ1カ所ずつ震災後初となる海開きが実現し、浜辺に夏らしいにぎわいが戻った。気仙3市町とも、夏まつりや七夕といった恒例行事の際、降雨に見舞われるケースもあったが、地元住民だけでなく県内外の大学生やボランティアらも参加し催しを盛り上げた。また、新しく生まれ変わった両市の中心市街地では夏季に数多くのイベントが繰り広げられ、帰省客や旅行者らも楽しませた。

 

各種催し通じ活気と交流生む/大船渡市

 

 大船渡市では、「三陸・大船渡夏まつり」をはじめとする各種催しを通じて活気を呼び込むとともに、さまざまな交流も生まれた。海水浴場は今年新たに1カ所が再開し、多くの人々が海に親しむ機会となった。
 三陸・大船渡夏まつりは同市魚市場を主会場に開かれ、海上七夕の巡航、21団体・約1200人による道中踊り、花火大会などを展開。主催の実行委によると、2日間の人出は約6万800人だった。
 盛町では「灯ろう七夕まつり」「盛川灯ろう流し」、三陸町では越喜来の「オキライサマー」「三陸港まつり」、綾里の「綾里夏祭り」などを実施。県内外からの参加、協力もあって盛り上がりをみせた。
 大船渡町の大船渡駅周辺地区では、おおふなと夢商店街、キャッセン大船渡などの各商業施設が各種催事を開催。今春オープンした防災観光交流センターでも住民、観光客との交流を目的としたイベントが行われた。
 市内では7月22日、三陸町の吉浜と越喜来・浪板の両海水浴場が海開きとなった。市や市観光物産協会によると、同日~今月19日の入込数は吉浜が延べ790人、浪板が同3218人。浪板は震災前の数に戻った一方、吉浜は高波や台風接近の影響などで遊泳不可となる日が多く、思うように伸びなかった。
 末崎町の三陸復興国立公園内にある碁石海岸キャンプ場は今年、オープンから5周年を迎えた。7月21日~今月20日の利用者数は延べ1022人で、例年に比べても多めに推移しているという。
 三陸町越喜来にある道の駅さんりくの指定管理者・三陸ふるさと振興㈱によると、同駅の来場者数は増加し、三陸ふるさと物産センターの売り上げも好調。新たなトイレの完成や好天が続いたことなどが要因とみている。

 

広田海水浴場に1万8200人/陸前高田市

 

 陸前高田市は7月20日、広田海水浴場(大野海岸)で8年ぶりとなる海開きを行った。今月19日までの入込数はおよそ1万8200人。連日のように家族や友人グループが連れだって訪れ、夏の海に活気を呼び戻した。

8年ぶりの海開きとなった広田海水浴場=陸前高田市

 一方、今月15日には同海水浴場で痛ましい事故が発生。監視員をしていた40代の男性1人が溺れて亡くなった。
 昨年の春以降、多数のイベント会場としても活用される中心市街地一帯では、7月14~16日の3日間「お天王さま協賛歩行者天国」を開催。同28日には「チャオチャオ陸前高田道中おどり」が行われた。いずれも震災で休止され、昨夏復活を果たした催しで、道中おどりには昨年の約2倍となる約550人の踊り手が参加。祭りを楽しもうという人が徐々に増えていることを感じさせた。
 気仙町の「一本松茶屋」には今月11~15日、同市観光物産協会など5団体の協働で臨時観光案内窓口を開設。案内所と、併設されたマルシェ(物産販売テント)は5日間で計2200人ほどが利用した。
 また、同窓口には今回初めて語り部コーナーを設置。語り部ガイドが交代で一日あたり数回、1回30分程度の震災講話を行った。同協会は「家族連れなどから当日飛び込みでガイドの依頼を受けることがあるが、そういった場合にも一本松茶屋の方をご案内でき、一定の効果があった」としている。

滝観洞と種山の入り込みは堅調/住田町

 

 7月29日の住田町夏まつりは、農林会館前に会場を移して初開催。台風の影響で1日順延となり、主催者発表の来訪者は約2500人と昨年よりも1割ほど下回った。降雨の中、輪踊りや五葉山火縄銃鉄砲隊の演武が繰り広げられた。

農林会館前で初めて開催された住田町夏まつり=世田米

 夏場は独特の「ひんやり感」を楽しむ行楽客でにぎわう上有住の滝観洞。滝観洞観光センターの運営などを担う町の第三セクター・住田観光開発㈱によると、「滝観洞まつり」が開かれた今月5日は大雨となったが、滝流しそばの大食い大会はにぎわいを呼んだ。
 11日以降は天候に恵まれ、涼を求める観光客で活況。入洞者は12、14、15の各日に400人を超えるなど、好調に推移した。
 道の駅・種山ヶ原ぽらんの今月11~19日の入込総数は8880人。期間を通して天候に恵まれ、前年を上回る実績となった。
 11日が祝日『山の日』になって以降、客足の動きは早めになっているという。前半の帰省ラッシュとなった12日と14日は、いずれも1400人を突破。15日以前の来客が多く、お盆期間中は〝短期集中〟の傾向が見られた。
 7月28日に気仙川で開催された「川床あそび」には、町内外から多くの家族連れが訪れ、自然や地元食に親しむイベントとして好評を博した。今月19日には初のトレイルランニング大会が開かれ、新たな交流人口創出策として今後の定着が期待される。

梅雨明け早く「猛暑日」も/気象

 

 気仙地方を含む東北北部は7月20日ごろ梅雨明けしたとみられ、平年より8日、昨年より13日早かった。
 気象庁によると、大船渡では8月以降にまとまった雨の降る日が多かった。5日に55・5㍉、16日に71・5㍉の日降水量を観測したこともあり、中旬までで同月の平年値より9㍉多い205・5㍉を記録した。
 7月20日~8月20日までの間、日照を全く観測しない「不照」は7日間だった。日中の気温が20度を下回る日もあったが、高気圧などの影響で暑い日が多く、このうち8月1日は日中の気温が35度を超える「猛暑日」を観測。30度以上の「真夏日」は6日間、25度以上の「夏日」は20日間あった。
 この暑さで体調を崩す人も現れ、8月1~20日までに救急搬送後に熱中症と診断された例は、大船渡地区消防組合管内(大船渡市、住田町)で4件、高田地区同(陸前高田市)で2件あった。