画業半世紀の軌跡追う、「熊谷睦男の精神世界展」開幕/陸前高田で9月2日まで(別写真あり)

▲ 国際公募展での受賞歴を持つ鎮魂シリーズをはじめ、熊谷さんの作品がズラリと並ぶ=市コミュニティホール

 陸前高田市の画家・熊谷睦男さん(84)=高田町=の個展「画業半世紀の軌跡 熊谷睦男の精神世界展─平泉世界文化遺産毛越寺延年の舞に魅せられて─」(同実行委員会主催)は30日、高田町の市コミュニティホールを会場に開幕した。世界的にも活躍する熊谷さんの集大成ともいえる個展で、9月2日(日)まで開催。著名な国際公募展での受賞歴を持つ鎮魂シリーズをはじめ、故郷の風景や営みを描いた作品など100点以上が展示されている。
 実行委員会(委員長・佐竹強彩光会顧問)は、彩光会や七虹会、三洋会、彩友会、日曜パレットなど、気仙の主要な絵画グループで構成。気仙の教育・芸術文化振興に長く貢献し、国内外で高く評価される作品を生み出してきた熊谷さんの輝かしい功績をたたえるとともに、その半世紀を回顧する作品鑑賞の機会を提供して、地域の芸術文化振興に寄与することを目的に個展を企画した。
 出展作品は、制作年の古い順に「生活の情景に魅せられて」「山の景観に魅せられて」「故郷の自然に魅せられて」「延年の舞に魅せられて」の4種類に大別される。
 このうち、「延年の舞に魅せられて」では、平泉の天台宗別格本山毛越寺に伝わる芸能「延年の舞」をモチーフに描いた「延年の舞・老女」シリーズを展示。初期の作品から近年の作品までが並べられており、白や灰色中心から濃い青色に変化している背景や、踊り手の体勢の細かな違いなどを見比べることができる。
 震災後の作品は、犠牲者追悼の思いを込めて「延年の舞・老女〈鎮魂〉」と銘打っている。この鎮魂シリーズは、世界最古の歴史と伝統を持つ国際公募展「ル・サロン」(フランス)、前衛的な現代絵画作家にとっての登竜門とされる美術展覧会「サロン・ドトーヌ」(同)の両サロンに連続入選出展されるなど、〝画家・熊谷睦男〟の名を世界に広めるきっかけとなった作品で、多くの来場者が足を止めて見入っていた。
 会場では、市収蔵美術品復興整備基金協賛チャリティーバザール展も併催。額入りグラフィック作品を手ごろな価格で購入する機会とあって、初日から多くの来場者でにぎわいをみせた。
 熊谷さんは「今までの集大成となる展示会。これだけやってもらって、絵描き冥利(みょうり)に尽きる」と実行委らに感謝。「作品は自分の人生の証しだということを再認識した。時代に合わせた生き方が作品に反映されていると思うので、その背景を考えながら見てもらえたらうれしい」と話していた。
 入場無料。開催時間は午前9時~午後7時(最終日は同4時)。