巧みな話術と人柄で魅了、商工会青年部50周年記念でアナウンサーの有働さんが講演/陸前高田(別写真あり)

▲ 来場者とのコミュニケーションを大事にしながら、さまざまな秘話で観客を楽しませた有働さん=陸前高田市

 数々のニュース・情報番組、紅白歌合戦の司会などを務めてきた元NHKアナウンサー・有働由美子さんの講演会は5日、陸前高田市高田町の市コミュニティホールで行われた。会場に入りきれないほどの人が詰めかけて聴講し、有働さんの楽しい話術と飾らない人柄に触れた。
 陸前高田商工会青年部50周年記念事業として企画された講演会。事前に配布された整理券を持った人でホールは満杯となり、入場できなかった人たちも会議室のモニターで観覧するほどの人気を博した。
 今年3月にNHKを退職したあと、青森〜茨城の約1000㌔を旅し、出会った人々から東日本大震災被災地の「今」について尋ねて歩いたという有働さん。アナウンサーとして何度も東北3県を訪れたことはあったが、「被災地を〝点〟ではなく、〝線〟としてしっかり見ておきたい」と考えたのだという。
 この中で、陸前高田への訪問についても述懐。「今までは、『NHKの有働』だから皆さんが話をしてくださっていたのだと思う。それが個人となったらどうなのかという不安があったけれど、陸前高田の皆さんは優しく迎えてくださり、本当にありがたかった」と語るとともに、「テレビの枠内で伝えられることは限られてしまうが、被災地の方々は一人一人、置かれた状況が異なる。そのことを忘れてはいけないと改めて感じた」と振り返った。
 中盤からは、来場者からの質問に答える形で、NHKの朝の情報番組『あさイチ』や紅白歌合戦、大河ドラマ『真田丸』のナレーションを務めた際の裏話、共演者とのエピソード、数々の失敗談などを巧みな話術で紹介。観客から笑いを引き出した。
 10月からは民放の夜のニュース番組でキャスターを務めることが決まっている有働さんは、「今までできなかったことにチャレンジしてみるつもり。『テレビでは不可能』と思われていることにも挑んでいかないと」と意欲をみせ、「これからのニュースは一方的に伝えるばかりでなく、視聴者からのいろんな意見を紹介していくことも必要だと思う」と述べた。
 最後に「こうしてこちらへ伺ったのも、陸前高田を訪れた時、皆さんにとても親切にしていただいたから。何かお返ししたいと考えていた時、商工会青年部の方に声をかけていただいた」と明かした有働さん。今月29日(土)と30日(日)に同市の「まちびらき」が行われることにも触れ、「一人でも多くの方に集まってほしい。人が集まることでほかの方のエネルギーにもなると思う」と、復興へと向かう陸前高田にエールを送っていた。