県指定の無形民俗文化財へ、日頃市の板用肩怒剣舞
平成30年9月15日付 7面

県文化財保護審議会は14日、大船渡市日頃市町の「板用肩怒剣舞」を無形民俗文化財に指定し、東日本大震災津波で被災した陸前高田市気仙町の有形文化財(建造物)「吉田家住宅主屋、土蔵、味噌蔵および納屋」の一部を指定解除するよう県教委に答申した。年内にも答申通り告示されて指定となる見通し。無形民俗文化財の指定は今年4月の「早池峰岳流浮田神楽」(花巻市)以来、県内38件目で、関係者らは地域の芸能の継承に意欲を高めている。

保管されている吉田家住宅の部材=陸前高田
芸能継承へ 意欲新たに
「吉田家住宅」は一部指定解除
板用肩怒剣舞は日頃市町に伝承される念仏剣舞で、成立は1752年(宝暦2年)とされる。同町板用地区の全37世帯が保存会の会員となっており、自治会、婦人会、子ども会等が協力して念仏剣舞の行事を行うなど「地域の芸能」として住民生活に深く浸透。昭和44年、市の無形民俗文化財に指定された。
現在は30〜40代の若手が主体となって活動。地域の子どもたちの数は減っているものの、同36年に開始した「子供剣舞」は現在も継続しており、子どもだけ、あるいは大人だけで剣舞を舞うことができる数少ない団体。平成24年には、国立劇場でも演舞を披露した。
歴史的背景と剣舞成立の来歴が明確なこと、大船渡市内の数団体に剣舞が伝承されており、「肩怒り」という独特な形状の衣装は、周辺の剣舞に影響を与えたこと、さらに地域における伝統文化の継承に結びつく活動が継続されていることが評価された。
答申を受け、市教育委員会文化財係は「剣舞の価値が認識されたことをうれしく思う。これからの活動、伝統継承の励みになれば」としている。
一方、気仙町字町裏地内にあった「吉田家住宅主屋、土蔵、味噌蔵および納屋」は、仙台領気仙郡の大肝入の住宅遺構で、1802年(享和2年)に建築された建物群。
平成18年に県の有形文化財に指定されたが、23年に発生した東日本大震災による津波で流出。県教委の呼びかけのもと、関係者や有志によって周辺に流された建築部材を回収後、洗浄・脱塩などを行い、回収部材は矢作町の市立博物館などに保管されている。
26年7月、陸前高田市教委は県教委に有形文化財の毀損(きそん)届を提出。28年7月、有識者らによる「県指定文化財大肝入吉田家住宅復元検討委員会」を市が設置し、文化財的価値を損なわない形での復旧を検討。
回収された部材の残存率などの調査結果を「県指定文化財大肝入吉田家住宅復旧計画検討委員会」で検討した結果、部材回収率は土蔵が9・3%、味噌蔵が2%、納屋(長屋)が28%と3割以下だったために滅失と判断し、7月6日付で滅失届を出した。
県文化財保護審議会では、指定された文化財のうち、土蔵、味噌蔵、納屋が滅失していることから、この3棟の指定解除を答申。主屋については6割以上の部材を回収できており、県指定文化財としての価値を有したまま復旧可能であることから、保護審議会委員の指導を受けながら復旧計画を作成する。
また、指定の一部解除に伴い、文化財の名称を「旧吉田家住宅主屋」とし、員数を1棟に改める。