加工用貝柱の出荷可能に、貝毒で規制続くホタテ
平成30年9月22日付 1面

県漁連は、まひ性貝毒によって出荷規制が続くホタテ貝について、加工用貝柱の出荷基準を緩和した。貝毒を蓄積しやすい中腸腺(ウロ)の除去を条件に、貝柱を検査して貝毒が不検出だった場合に限り、出荷できるようになったもの。今月に入って新基準での出荷をスタートさせた漁協もあるが、鮮貝出荷は今もなお多くの海域で規制が続いており、漁業者は一刻も早い貝毒の収束を願う。
県漁連が基準を緩和
本県では県内を12の海域に区分し、その中に13カ所の監視定点を設けてほぼ毎週1回、ホタテ貝を検査している。その結果が、国が定めた基準を超えると、出荷が規制される。
貝毒による規制は今年3月以降、釜石以南で最大6海域におよんだ。気仙管内では、まひ性貝毒の基準値を超えたことによって、4月10日から大船渡湾西部海域、南部海域(陸前高田市)、同24日から三陸町海域、5月22日から大船渡湾東部海域でホタテ貝の出荷規制が始まった。
規制解除の条件は、貝毒検査による毒値が3週連続で規制値を下回ること。大船渡湾西部海域では8月下旬から3週連続で規制値を下回ったことから、今月11日付で規制が解除された。規制解除は7月の中南部海域(唐丹町)に続いて2カ所目。
長引く規制を受け、県漁連では8月27日、「ほたてがい処理加工要領(麻痺性貝毒対象)」を一部改正し、基準を見直した。
国では毒化貝の加工向け出荷基準を示していないため、消費者安全の観点から関係道県がそれぞれ業界自主規制の基準を設定している。
旧基準では、ウロに蓄積された貝毒が規制値を上回ると出荷できなかったが、新基準では、ウロから検出される貝毒が一定基準以下であることを条件に、県認定工場で貝柱を検査して貝毒が不検出だった場合に限って加工、出荷できるようになった。
規制の長期化などで加工原料の不足も叫ばれている中、今回の基準緩和について海産物加工・卸・販売を行う㈱五十集屋(三陸町越喜来)の野田修一社長(49)は「水揚げしてくれる漁協が増えてきて、助かっている。安心安全に努めていきたい」と語る。
県漁連によると、本年度のホタテ貝共販実績は8月末現在、県全体で396㌧(前年同期比60・6%減)、気仙管内では25㌧(同96・4%減)と、大幅に減少している。
現在も出荷規制が続く海域のうち、三陸町吉浜の吉浜漁協では、今月1日から新基準での出荷をスタート。吉浜でホタテ養殖を営む渡部寛さん(62)は「今年はワカメのあとの収入がなかったので、ホッとしている」と胸をなで下ろす。
同漁協の佐藤善之業務課長(51)は「岩手県と県漁連の努力のおかげで出荷できるようになった。鮮貝出荷の規制も、一日も早く解除されれば」と話していた。