「こども食堂」ヒントに、「たかた☆ゆめキッチン」/陸前高田(別写真あり)

▲ 子どもたちがリラックスした雰囲気の中で食事する「たかた☆ゆめキッチン」=陸前高田市

 子どもが一人きりで食事をとる〝孤食〟の防止や、地域とのつながりをはぐくむための取り組みとして全国に拡大する「こども食堂」。温かい雰囲気の中で、育ち盛りの子どもたちに栄養バランスのとれた食事を提供できるという利点があるだけでなく、保護者のストレスや悩み解消の場としても支持される。気仙地方では今年3月から陸前高田市で民間による活動が始まっており、月1回の開催のたび親子らの笑顔が広がっている。

 

食事と遊びの場を提供
月1回開催で親子らサポート

 

 「こども食堂」は貧困家庭や孤食の子どもに対し、食事と居場所を提供する場所として始まった取り組みだが、明確な定義があるわけではなく、運営形態もさまざま。概して地域の中で子どもや保護者に無料または安価で食事をふるまい、なごやかに過ごしてもらうことを目的とする。
 陸前高田市では「たかた☆ゆめキッチン」(齋藤まゆみ・簑島和憲共同代表)として、昨年11月にプレイベントを実施。今年3月から、あしなが育英会が運営する陸前高田レインボーハウス(高田町・給食センターとなり)を会場に、月1回、原則第3金曜日に開催している。
 市内の子育て世帯(子どもは18歳ぐらいまで)が対象だが、大船渡市や住田町からも利用があり、厳密には地域を限定していない。午後5時~8時の開催時間で、毎回60~90人の利用がある。参加費はこどもが無料、大人は300円となっている。
 スタッフはボランティア。赤い羽根共同募金の助成を受けているが、「地域で子どもを育てる」文化が残る気仙らしく、市内の産直や地元住民が食材を提供してくれることも多い。メニューはカレーを基本とし、寄せられた食材でスープや副菜、デザートがつくことも。食堂の白板には提供者の名前が並び、地域の人々に対する感謝の気持ちもはぐくむ。
 食事前後の会場には、中学生が小学生の遊び相手をする姿や、友達同士で卓球やバドミントンを楽しむ光景が広がる。プレイベントを開いた際にとったアンケートでは、「子どもの遊ぶ場所が少ないので助かる」といった声が多かったという。
 簑島代表(38)は「仮設住宅ではおとなしく過ごさなければならないなど、元気に遊ぶことをずっとがまんしてきた子も多い。ここではたくさん遊び、たくさん食べ、心を解放してほしい」と語る。
 また、保護者にとっても、「1食分、支度をしなくてもいい」「栄養のあるものを子どもに食べさせられる」「普段小食の子がおかわりした」といった声があり、食事づくりのストレス軽減、悩みを抱える子育て世帯の孤立化を防ぐ場にもなっている。
 市が昨年度、中学生以下の子を持つ保護者を対象に実施した生活に関するアンケートでは、過去1年間に困窮経験があった家庭に対する「必要な食料が買えなかった」という問いに、「何度かあった」「頻繁にあった」と答えた世帯が計18・6%にのぼった。温かい食事の提供は、こうした家庭への支援にもつながるとみられる。
 市子ども子育て課の千葉達課長は、「大変ありがたい取り組み。せっかくこうして立ち上げていただいたので、活動が定着へ向かうよう、市としての支援策を考えていきたい」とする。
 一方、「こども食堂」が全国的に認知される中、目的が〝貧困家庭の救済措置〟だけのようにとらえられると足を運びにくくなる側面もあることから、「たかた☆ゆめキッチン」では「こども食堂」という表現は前面には出さない。
 簑島代表は、「こども食堂をヒントにした、陸前高田独自の取り組みだと思ってもらえれば。誰でも気軽に来てもらいたいし、『きょうはゆめキッチンの日だ!』と毎月楽しみにしてもらえるような場所にしていきたい」と話している。