差出人も手を合わせ、漂流ポストの手紙供養/陸前高田(別写真あり)

▲ 今年の手紙の供養には、差出人が初めて参列=広田町・慈恩寺

 陸前高田市広田町の慈恩寺(古山敬光住職)で26日、同町赤坂角地のカフェ・森の小舎が開設する私書箱「漂流ポスト3・11」に届いた手紙の供養が行われた。これまでは同店店主の赤川勇治さん(69)だけが参列していたが、今回初めて手紙の差出人も足を運び、静かに手を合わせた。
 赤川さんは、震災で大切な誰かを失った人の悲しみ、人に言えない気持ちを、手紙に書いてもらうことで安らげることができないかと、平成26年3月に漂流ポストを開設。これまでに約500通の手紙が届いており、その中には、震災ではなく病気や事故で親しい人を亡くした人々の声も交じっているという。
 初期に届いた手紙は、誰にもぶつけることができない苦しい感情や、埋めようのない喪失感をつづったものがほとんどで、受け取った赤川さんが「夜に読むのは怖かった」と振り返るほど。「したためられた強い思いには〝魂〟が宿っている」と考えた赤川さんは、同年10月に初めて同寺へ手紙の供養を依頼した。
 その後、毎年1回供養を行ってきたが、昨年は多忙のため見送っていた。「手紙を書かれた方に申し訳ない。できるだけ早く供養したい」と今回の供養に臨んだ。
 同日は赤川さんのほか、手紙の差出人で仙台市在住の佐藤せつ子さん(62)と清水和子さん(69)が参列。赤川さんは、3冊にのぼる2年分の手紙ファイルを同寺の古山昭覚副住職へ託し、佐藤さんと清水さんと共に、読経に合わせて焼香するなどした。
 供養が済んだファイルを受け取った赤川さんは、「ほっとした。佐藤さんと清水さんにも参加してもらえてうれしい。手紙を書くことで元気になってくれた証しだと思うので、来年以降も参加者が増えてくれたら、ポストを置いた価値があったと思う」と穏やかな表情で話していた。