陸前高田の仮設商業店舗 あす利用期限満了、約80施設が譲与の見通し

▲ 譲与を受け継続を決めた大隅つどいの丘商店街=陸前高田市

 陸前高田市で東日本大震災後に整備された仮設の商業施設の多くが、今月30日で利用の最終期限を迎える。中心市街地などでの本設施設再建の予定が決まっていない入居事業者らは、市から施設の無償譲与を受けるなどして事業継続の道を模索しているが、譲与によって「仮設」から「本設」施設の扱いとなり、新たに発生する税金対策などにも頭を悩ませる。一方、本設化によって助成金の対象となる場合もあることから、市は「事業を続けるにあたって、できるだけ不安を減らせるよう、丁寧に個別対応していきたい」としている。

 

事業継続の道を模索

 

 同市内の仮設商業施設は独立行政法人・中小企業基盤整備機構の補助などを活用して平成24年に整備されたものが多く、当初の利用期限である丸5年が経過したあとも、半年単位で延長を繰り返してきた。
 しかし、最終的な利用期限が30日に迫り、「本設店舗建設の予定地は決定しているが、事業再開が9月末日以降になる」といったやむをえない事情がない限り、これ以上の入居延長はできなくなる。
 同市には現在、134の仮設施設が残っているが、まだ5年間の利用期限に達していない施設は8カ所。期間満了で撤去が決まった施設は5カ所となっており、店舗再建の見通しが立たない状態で期限を迎える事業者も多い。
 市は今月、仮設施設が建つ土地の地権者と入居事業者を対象に説明会を実施。▽(本設施設がまだ再建中といった理由で)入居延長を希望する▽施設を撤去する▽譲与を希望する──の三つの方法について、それぞれの手続き内容を説明したうえで、後日、意向を確認した。
 その結果、延長を希望したのは30施設。譲与についてはこれまでのところ、80施設ほどが希望の意向を示しているという。
 譲与の場合、施設は事業者らに無償で譲り渡されるが、プレハブの建物であっても「応急仮設」から「本設」の扱いになり、改めて建築確認を受けなければならない。登録免許税、不動産取得税、固定資産税など各税の対象となり、修繕などにかかる費用も自己負担に。また、震災前に借地で営業していた場合、被災事業者が受けられる税金免除措置の対象にならないため、税負担が重くなるケースも想定される。
 このうち、高田町の大隅つどいの丘商店街は、「カフェ・フードバーわいわい」店主の太田明成さん(52)が代表して施設譲与を受ける。今後は太田さんが家主となり、入居テナントから家賃を徴収する形で商店街を継続。11月以降、三つの空き店舗が生じることから、「意欲のある事業者やNPOなどの受け皿になりたい」とする。
 賃料は約30坪のスペースが月額8万円、約15坪のスペースが同6万5000円(倉庫料など別)。中心市街地での本設再建を見据えながら将来の施設解体費用を積み立て、施設全体にかかる税金なども家賃からねん出する。
 太田さんは、「譲与してもらうと決めたあとで税金が思った以上にかかると分かったので、自分以外にも『どうしよう』と考えてしまう商業者は多いと思う」といい、「余裕がなくて中心市街地へ移れない人がほとんど。固定資産税評価額の見直しや、〝産業特区〟のような扱いを個々に適用してもらうといった措置も考えてもらえれば」と要望する。
 一方、本設施設となることで、被災した資産の再取得にかかる「中小企業被災資産復旧事業費補助金」の対象になることから、内装工事や、震災前に償却資産として申請していた機器の購入などについて補助が受けられるようになるなど、プラス面もある。
 さらに、33年3月31日までに東日本大震災復興特別区域法に基づく「産業再生特区」の指定を県から受けることにより、ものづくり産業や医療薬品、情報サービス、観光、食品、農林水産関連の産業においては、雇用や設備投資、固定資産税や不動産取得税などの減税措置も受けられる。
 市商工観光課は「ケースによって該当する税制優遇なども違うので、それぞれ丁寧に相談に応じたい」としている。