台風24号 気仙を通過、各市町で避難所開設/けが人や目立った被害なし(別写真あり)

▲ 雨脚が強まる前に避難し、一夜を過ごす住民たち=住田町役場

 日本列島を縦断するように進んだ大型で強い台風24号は1日未明、気仙地方に最接近し、昼ごろまでに北海道の東へと抜けた。気仙3市町では前日のうちから避難を呼びかけるなど、警戒を強めた。1日午後5時現在、目立った人的・物的被害は出ていないが、米やリンゴなど収穫期を迎えた農水産物の被害調査はこれからで、その影響が懸念される。

 台風24号は9月30日午後8時ごろ、非常に強い勢力(最大風速44㍍以上54㍍未満)で和歌山県田辺市付近に上陸。その後、強い勢力(同33㍍以上44㍍未満)となり、日本列島を縦断するように進んだ。
 本県には1日未明に最接近。気仙でも風雨が強まり、大雨(土砂災害、浸水害)、暴風などの警報が出された。最大瞬間風速は大船渡市で午前4時34分に27・7㍍、陸前高田市で同8時46分に18・4㍍、住田町では同4時27分に29・4㍍を観測した。24時間降水量は大船渡52・5㍉、陸前高田54・0㍉、住田67・5㍉となった。
 各市町では30日夕、全域に避難準備・高齢者等避難開始情報を出して避難所を開設。ピーク時で大船渡市では19人、陸前高田市では17世帯24人、住田町は21世帯35人が避難。1日午前9時ごろまでに全員が帰宅した。
 このうち、大船渡市大船渡町の大船渡地区公民館に身を寄せた同町の70代男性は、避難開始情報を受けてすぐに動いたといい、「何事もなければいいが」と、ラジオに耳を傾けながら過ごしていた。
 住田町では避難開始情報が出た午後5時以降、町社会福祉協議会の職員らが独居高齢者宅などを回り、早めの対応を促した。町役場には世田米地区の13世帯20人が避難。町民ホールでは机を使い世帯ごとの仕切りを設け、避難者はソファなどの上に毛布を敷いて横になり、台風の通過を待った。
 気仙川に近い世田米字小府金に自宅がある佐々木重雄さん(80)は、妻の美保子さん(77)とともに同7時ごろから身を寄せた。当時は雨脚は弱かったが長靴をはき、薬や保険証、普段は仏壇に置いている位牌などをリュックサックに入れて持ってきた。重雄さんは「避難してきたのは、これで2回目。早めに来て、誰にも迷惑をかけないようにしなければ。ここはみんなの顔を見ることができて、安心感がある」と話していた。
 各市町によると、1日午後5時現在、けが人や建物などへの被害報告は入っていない。大船渡市は末崎町神坂と三陸町越喜来所通の市道、陸前高田市では矢作町二又地区など、住田町では町道と林道の計4路線で倒木が確認され、対処を進めた。
 東北電力によると、倒木などの影響で大船渡市三陸町、陸前高田市小友、広田両町の延べ1220戸が停電。1日午後1時45分までに全て復旧した。
 JR大船渡線BRTは1日の始発から上下17便、三陸鉄道南リアス線は6便の運行を見合わせ、大船渡線BRTは午前9時ごろ、三鉄南リアス線は同11時ごろから再開。県交通路線バスは平常通り運行した。
 小中学校は陸前高田市が全校休校、大船渡市と住田町では午前10時ごろからの登校となった。高校、支援学校は全て休校となった。
 台風24号は1日正午ごろ、北海道の東沖で温帯低気圧に変わった。盛岡地方気象台の予報では、2日の沿岸南部は晴れ時々くもりで、日中の最高気温は大船渡で24度ほどとなりそう。収穫シーズンに入った米やリンゴ、海のカキなど農水産物の被害調査は、天候の回復を待って本格的に行われる。