ILCの可能性知る、県が人材育成の講演会/モデル校の大船渡高で
平成30年10月5日付 2面

県は2日、「未来のILCを担う人材育成事業」のモデル校に指定している県立大船渡高校(高橋正紀校長、生徒530人)で、素粒子実験施設「国際リニアコライダー」(ILC)にかかる講演会を開いた。大学教授や県の関係者らが講話し、北上山地が施設建設の有力候補地とされるILCの可能性や、最新の動向を生徒らに伝えた。
ILCは、宇宙誕生(ビッグバン)直後の状態を再現し、解明されていない宇宙の謎を探るための実験施設。施設の国内建設候補地には岩手、宮城両県にまたがる北上山地が挙がっており、誘致推進の最終判断は政府が年末までに行う見込みとなっている。
県政策地域部科学ILC推進室では、平成29年度からILC推進モデル校を指定。現在、本年度指定を受けた大船渡を含む県内8高校で、ILC誘致に向けた講演会や研究施設の見学、交流活動などを展開している。
この日は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)名誉教授で、東北大・県立大客員教授の吉岡正和さん(72)と、同推進室の高橋孝典主査(38)が大船渡高校を訪問。1、2年生を対象に約2時間の講演を行った。
このうち、吉岡さんはILCの仕組みや、北上山地が施設建設の候補地になっている理由、建設された場合に予想される経済波及効果、生活環境への影響などについて説明。また、ILCに関わる近年の周辺諸国の動向などにもふれた。
ILCの建設候補地が日本にある理由について、吉岡さんは「日本には研究力、技術力両面で十分なキャパシティーがある」と解説。大規模国際施設が国内に初めて設けられる大きなチャンスであり、技術者らの期待が高まっていることも伝えた。
一方、近年、科学技術分野でも急成長する中国に、ILCと同様の機能を持つ巨大円形加速器が建設される計画もあるといい、吉岡さんは「このチャンスをものにするのか、しないのか。私たちは重大な岐路に立っている」と述べた。
聴講した生徒らは、吉岡さんの話からILCの役割へ理解を深めながら、施設完成後に海外の技術者と東北の住民が生活を共にする〝未来予想図〟へ考えを巡らせた様子だった。同校は今後、ILCの研究を行う東北大学の見学も予定している。