一部施設除いておおむね完成、陸前高田・長部川水門 

▲ おおむね完成した長部川水門=気仙町

津波防御ライン形成進む


 県が三陸高潮対策事業として陸前高田市気仙町の二級河川・長部川河口付近で整備を進めていた長部川水門がおおむね完成し、東日本大震災で失われた津波防御機能がほぼ復旧した。震災の発生からきょうで7年7カ月。津波で甚大な被害を受けた気仙両市の沿岸部では防潮堤や水門工事が着々と進んでおり、各地区で津波防御ラインの形成が図られている。


きょう震災7年7カ月


 長部川は、気仙町の笹長根山を源として流れ、国道45号を経て長部漁港に注ぐ延長4・6㌔、流域面積9・6平方㌔㍍の小規模河川。流域の大部分は山地斜面で構成される羽状流域の形状で、東日本大震災前には漁港付近の最下流部に人家が集中していた。
 震災による津波は河川を遡上して護岸や防潮堤を崩壊、流出させたうえ、広域的な地盤沈下によって甚大な被害が発生。さらに、治水安全度が著しく低下している状況だった。
 このため、県では津波防御対策として、数十年から百数十年に1度程度発生する比較的頻度の高い津波を想定し、河口部にT・P(東京湾平均海面)12・5㍍の水門1基の新設を計画。河川付近には水産加工場が集積していることから、洪水対策として延長820㍍にわたって河川改修を施している。
 長部川水門には「水門・陸こう等自動閉鎖システム」が導入される。同システムは、国が発令する津波注意報・警報を統制局(県庁、釜石合同庁舎)が全国瞬時警報システム(Jアラート)で受信すると、衛星回線を通じて施設に閉鎖命令が出され、自動で水門・陸こうが閉鎖される。
 本県沿岸部の水門・陸こう約520基のうち、約300基は常時閉鎖やフラップゲート式となり、残る約220基が自動閉鎖の対象となる。
 気仙では、大船渡市赤崎町の合足農地海岸の防潮堤で29年から同システムの本格運用が始まっており、今後、各地区でシステムの導入が図られていく。
 一方、河川改修では、河床幅を震災前の6・8㍍から9㍍に拡張。被災前、川に沿って整備されていたT・P4㍍の防潮堤は、水門から上流約200㍍にある「湊橋」までは周辺の土地利用に合わせて同1・5㍍~同1・6㍍、湊橋から上流の国道45号にかかる長部橋までは同1・6㍍~同5・0㍍の高さで復旧されている。
 水門本体の工事は9月末で完了。残るは、水門下流側の護岸工事と水門の遠隔操作設備の工事となっており、平成31年度末の完成を目指す。総事業費は約38億円で、復興交付金を活用する。
 併せて、長部漁港海岸では県による防潮堤の復旧工事が行われており、堤防の高さは震災前の同6・5㍍を大きく上回る同12・5㍍に設定。延長は665㍍で、堤体工事は31年度内の完成が見込まれている。
 水門と防潮堤が接続されることにより、長部地区の津波防御ラインが完成することとなる。
 県沿岸広域振興局大船渡土木センター復興まちづくり課の阿部忠課長は「震災以降、地域の安全安心のために工事を進めてきており、津波防御対策の機能を確保することができた。残る工事についても全力で取り組みたい」と話している。